<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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役所の手続きでハンコの捺印が廃止される方向で動いている。

もともと三文判で良いような事が多いハンコの利用。
なんでわざわざ1個100〜300円のハンコを買って捺印する必要があるのか。
履歴書。
領収書。
各種届出書類。
会社の見積書に納品書。
宅急便の受け取り伝票。
どこでも売っている三文判で良いのであれば別にサインでもいいじゃないかというようなことを世間の人々は思っていたけど変えることができなかった。

なぜならハンコ屋さんが可愛そうだから。
じゃなく、それが長年の習慣だったから。

思えば子供の頃はハンコというかスタンプが大好きであちこちにペタペタ捺しては叱られたものだ。
親が商売をしていた関係で、ハンコ、小切手や手形に金額を打つロータリーチェックライター、手動式計算機のタイガー計算機などを使う親父を見ていておもちゃの一種と思い勝手に手を出してこっぴどく絞られた。
とりわけタイガー計算機のハンドルを面白がってクルクル回していると鉄拳を受けることも少なくなく、でもそのメカが面白くて触りたくてしかたがなかった。

文句を言われにくいのがハンコだった。
もちろん実印なんかは触れることさえ許されなかったがいわゆるゴム印は好き勝手に押す時間をもらってペタペタ遊ぶことができた数少ない仕事道具だった。

小学校4年生の時の担任の先生が福岡県久留米出身の新人先生だった。
この先生が大阪の私の学校に赴任して一年を通してしてくれたことが誕生日が来ると福岡の石を使って先生自らが彫った名前のハンコのプレゼントだった。
四角い石にファーストネームが刻まれているのだが、私は3月生まれのためクラスの最後にそのハンコをもらった。
その時の嬉しかったこと。

それから10年ほど経って芸大に入学してから自分で描いたイラストや水彩画など平面作品には必ず先生の彫ってくれたハンコを捺印するようになった。
さらにそれから30年の歳月が流れて4年生の時のクラスの何人かで定年になってお婆さんになった先生を大阪に呼んで同窓会をしたときに、先生は新しいハンコを彫ってみんなにプレゼントで持ってきてくれた。
人生最高のハンコだった。

これがサインならどうなるのか。

ハンコ文化の行き先は果たして何処へ。


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (ダル)
2020-10-09 21:10:18
 会社でも、百均の三文判で用の足せることが多々あるので、捺印廃止は基本的には賛成ではある。
 しかし、結婚する時父親に作ってもらった印鑑、たぶん高かったと思う。最初に使ったのはその父が亡くなって、相続の書類に押した時。立派な黒い革のケースに入った私の印鑑、押すことが無くなっても、やっぱり大切な思い出の品です。少しは残してほしいような、ハンコ文化…きっと同じ思いの人は少なからずいるのではと思います。
 
 
 
ハンコの思い出 (監督@とりがら管理人)
2020-10-10 23:55:48
大阪市内にあるハンコ屋さんの看板に「いいハンコ、いい人生」と書いているところがありました。
まさにハンコにはそういうところもあるんですね。
最近そのハンコ屋さんも看板を変えて、良い文句が消えてしまいましたが。
 
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