<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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昨年春。
かかりつけの病院で血液検査をしたところ、ある数値が良くないことがわかった。
いや、良くないことはずっと前からわかっていたのだが、悪い数値から下がらなくなっていたのだ。
以前は悪くなっても暫くすると良くなっていたのだ。

かかりつけの病院は病床数70床ほどの中規模病院で、外来患者も多く、地域に貢献している病院だ。
なんといっても院長が私の小中学校の同級生なのだ。
子供の頃に一緒に遊んだ仲なのである。
だから安心感がある。
ただし安心感と信頼感は別物であることは注意が必要だ。

主治医は院長ではない。
院長は外科医だ。
外科医が血液検査をするということはあまり聞かないので、当然、私の主治医は内科の先生なのであった。
この先生が血液検査の経過を見てひとこと。

「すぐに精密検査が必要です。これから〇〇病院へ行けますか?」

と言った。
これは私が暇に見えたから「時間がありそうなので病院紹介するね。」という意味ではない。
それだけ急を要するというシチュエーションなのだ。
〇〇病院はこの友人の病院からほど近い場所にあり、大阪南部でも信頼性の高い国立系の病院だ。
バス停にもこの病院の名前がついているぐらい地域では有名な大病院なのだ。
私の父も50代の終わりに心臓カテーテルの手術を受けたことがある。
その病院に早急にアポをとって紹介状持参で診てもらいなさい、というからにはただ事ではないのだろう。
カミさんにその旨メールを打ったところ、すぐに返事が戻ってきた。
その文面を見る限り6年前に肺がんの疑いで入院したときと同等のインパクトでかなりのショックを受けていたのだ。
「保険金が入るかも^^」
などと言うことはまったく書かれていなかった。
最近よく些細な喧嘩をすることがあるが夫婦関係はまだ円満みたいで安心した。

で、〇〇病院へ行くと血液採取が待っていて、CTではなくMRI検査を受けさせられた。
30分以上も「ウィーンウィーン、ガタガタガタ、ウィーン」という喧しいMRI検査を受けさせられたものの結果を知るのは1週間後だという。
MRIの結果はすぐに確認できるのかもしれないが、血液検査は分析に回さねばならないので即結果、というわけにはいかないのだ。

ということで私以上に心配しているカミさんを連れて1週間後訪れると、〇〇病院の担当の先生は悪い部位について懇切丁寧に説明してくれた上に、次の一言を付け加えたのであった。

「お酒、我慢しないといけません。飲んでも一週間にビール1杯程度で。」

いわゆる「ドクターストップ」というやつなのであった。
この一言で私のお酒人生は大きく変わることになった。
というか終焉(今のところ)を迎えることになったのであった。
この一言をカミさんと一緒に聞いたことがお酒終焉の最大の原因であることは間違いない。

この日から、酒を飲まなくなった。
「週一でビール一杯程度なら」
という主治医の一言よりも厳しい体制が取られたのだ。

保管してあった缶ビールと日本酒は料理酒になった。
得意先や知人には「酒飲めないんです」というとどのような噂になるのか心配だったので、とりあえず伏せた。
お中元でもらったビールも当然、料理に使われた。
プレミアムモルツやエビスをいただいたのだが、この少々高級ビールが実は料理の味を著しく高めることはポジティブな副作用として知ることができたのは良かった。
しかし、断酒して最初の3ヶ月のつらいこと。

いい料理が出てくると当然飲みたくなる。
そこを我慢してノンアルで行くので、周りのみんなは「????」となる。
私も飲みたいのだが、そこはぐっと我慢をして「明日、検査なんです」というような嘘をついてかわすことにしたが、周りが楽しそうに飲んでるのは情けないとうかむかつくというか。
そんなこんなで飲み会への出席も断るようになってしまったのであった。

そんなこんなで1年が経過。
半年前の検査では相変わらず数値は芳しくなかったのだが、先月実施した検査で、なんと主治医の先生が、

「数値、まだ高いですけど標準内になりましたね」

と自分のことのように笑顔で診断。
私もカミさんも思わず笑顔。
もう、通常値には戻ることは難しいと言われていただけに驚きでもあった。

「で、お酒は週1ぐらいですか?」
と訊かれたので、
「全然飲んでません」
と答えた。
「そりゃすごい。なかなかできないんですよ。患者さんは。」
「はあ」
「数値がもとに戻ってきたので」
「飲んでもいい?」
「いや、断酒、続けてください。もう飲むのは終わりですね」

断酒の効能。
健康にはいいが、精神的にはかなり厳しいものがあるのも正直なところなのだ。


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