<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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北海道新幹線が開通した。
これで函館から鹿児島まで最低2回の乗り換えは必要だが新幹線で行くことができるようになった。
所要時間はだいたい13時間。
飛行機の嫌いな人でも陸路で日本の北から南まで夏なら陽射しのあるうちに鉄道で移動できる時代がやってきたというわけだ。

新幹線開通のニュースを聞くたびに思い出すのが悲しい思い出。
それは山陽新幹線が新大阪から岡山まで開通したときのこと。
この時私は小学生だったが、新幹線が開通することで山陽本線の急行「鷲羽」が無くなってしまうことが途方も無く悲しく、正直言って超特急ひかり号が岡山まで行くことに喜びもへったくれもなかったのであった。

鷲羽号に乗る途中の楽しみ「姫路駅のえきそば」も新幹線になったら楽しめない。
ニュースで報じられていたので小学生の私でもよく知っていたのが「山陽新幹線」はほとんど「地下鉄新幹線」であること。
当時世界最長に近い六甲トンネルをはじめ東海道新幹線の曲がりくねった路線を反省して出来る限り直線にしたためトンネルだらけとなってしまった。
結果、景色がほとんど拝めない地下鉄のような新幹線になってしまったのであった。
私は物心が付く前から鷲羽号に乗ってきており、姫路のえきそばの次に楽しみなのが車窓の景色。
舞子付近を走る海辺の風景。
播但地区の緑広がる美しい風景。
などなど。
それが新幹線になるとほとんど見えなくなってしまうのだ。
とりわけ全線内陸部を走るため海を見ることが全くなくなるのが極めて悲しかった。

親は新大阪から岡山ま最速1時間でいけるようになることを感無量で喜んでいたが、私は2時間、3時間の列車の旅が無くなることをメチャクチャ悲しんでいたのであった。

新大阪から岡山までの所要時間も更に短縮され今や45分ほどになってしまったが大人になった現在もたまに仕事で広島や岡山に行く時を除いて新幹線はちっとも嬉しくなく、それよりも、
「新快速を岡山まで延長してくれんかな。東は福井の敦賀まで走ってるんやから。」
と在来線の快速電車の延伸と本数の増加を望んでいる。

本数の増加といえば新幹線が走っている地域は在来線の本数よりも新幹線の本数の方が多いところも少なくない。
新幹線が10~15分おきに走っているのに在来線が30分おきなどということは珍しくないのだ。
これって誰もヘンだと思わないのだろうか。
新幹線が地域のために建設されるというのであれば、私は在来線の本数を増やしてスピードアップするほうがどれだけ地域の役に立つだろうかと考えてしまう。
岡山駅では新幹線はデイタイムに1時間に上り下り併せて16~20本走っているのに、在来線の山陽線は4~6本。
乗りたい電車をギリギリで見送ってしまったら次の電車が来るまで30分も待たなければならない時があるのだ。

これが北海道新幹線の開通した新青森駅なら新幹線が1時間あたり上下合わせて2~4本、在来線が2~6本。
こういう地域に果たして新幹線を走らせることに何かメリットがあるのか大いに疑問である。
新幹線を走らせる予算で在来線を強化して地域の利便性を高める方が良いんじゃないかと思うのである。
そもそも鉄道は雪にも強いし、弱い地盤の地域でも安定して走行できる技術的メリットがある。
それにエコだ。
高齢者にもやさしい。
ビジネスマンや学生にも優しくバスのような運行時間にあやふやなところもない。

新幹線というのは多くの場合、東京と地方を結びつける手段であって、東京と繋がることにメリットのあるインフラだ。
だから東京一極集中で地方に自立性や自主性がなく、他力本願が強い場合は役に立つのかもしれない。
が、時代は地方に流れようとしている。
そして流そうとしている。
こういう時に1時間に1本しか走らない新幹線を作るよりも1時間に数本の在来線を走らせて近隣の小さな町でネットワークを形成するほうがよっぽど利益があるんじゃないか。
また北海道のように東京からも大阪からも離れたところは新幹線を整備するよりもカシオペアやトワイライトエキスプレスのような本格的長距離列車を走らせるほうが地方の時代の魅力を引き出すのに役に立つし、今の日本人が理想とする生き方に近いようにも思える。
正直言って東京や大阪へ行くのなら次の新幹線を1時間待っている間に空港へ行って飛行機に乗るほうが圧倒的に合理的で安くて早い。
天気が良ければ景色もいい。
なにしろトンネルがない。
ほとんどすべてが絶景だ。
新幹線が次の駅につく頃には東京や大阪に着いていて仕事を始めることができるのだ。

昨日の目出度いニュースを聞いて、オメデタイと思ってしまった私は子供の時に感じた山陽新幹線の「悲しい思い出」を北海道新幹線で「もっと悲しく」感じてしまったのであった。

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