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米テレビシリーズ「スピンシティ」はアメリカらしい秀逸なコメディドラマだった。
ニューヨーク市長と彼を取り巻くスタッフや市議会員、市民らが織りなす社会風刺ドラマ。
それもかなりセンスのいい上質の番組なのであった。

CSのスーパーチャンネルで放送されていたこの番組では「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や一連の映画作品とは違ったマイケル・J・フォックスを見ることになった。
彼の役どころはニューヨーク市長補佐。
市長を立てながらどのように市政をこなしていくかという、知的で行動力を要する仕事だ。
そもそもこういう「政治の舞台」をコメディにする能力に関しては日本人にはまったくといっていいほど備わっておらず、同様の番組を日本では見ることはない。
練られたアイデアがトントン拍子で進む筋書き。
個性豊かな各キャラクター。
時代を取り入れたセンスの良さ。
あっと驚くようなゲスト出演者が登場。
スピンシティは放送から20年近く経過したいま見ても楽しめる古くならないコメディだ。

そもそもどうしてこういうアイデアが生まれたのか。
大いに関心があった。
ツインタワーが遠目に臨める風景カットが時々出てくる番組は9.11で世界が変わってしまう以前の平和でノホホンなニューヨークであるというところも安心して見ることのできる要素だ。
当時の実際の市長はジュリアーニ氏だったわけだが、番組内に登場するランドール市長はそのフィクションさに違和感を抱かせない風格とおかしさを併せ持っていた。
そして市長を支える「背は低いがエリート敏腕補佐官」がマイケルなのであった。

先日読んだ「ラッキーマン」でこの番組の素となったのがマイケル・ダグラス主演、ロブ・ライナー監督の「アメリカン・プレジデント」であったことを知った時、少なからず驚いたのであった。
なぜなら、あの映画にマイケル・J・フォックスが脇役で出ていたことを完璧に忘れていたからなのであった。
彼の役どころは大統領補佐官。
マイケル・ダグラス演じる大統領は画面に頻繁に登場するが、マイケル演じる補佐官はそんなに画面に出てこなかったように記憶する。
今になって、
「お、あれマイケル・J・フォックスちゃうんか」
と彼が脇役をやっていることに少なからず驚いたことを思い出したのであった。

その裏側では、彼は映画での役割に限界を感じていたということがある。
主演する映画はことごとく失敗。
その証拠に、外国の我々には彼の記憶は薄れて、主演作の題名なんか言える人は殆どいない・
そんな時に「君には不十分な仕事かも知れないが」とオファーされた脇役を甘んじて受け入れた。
これはなかなか出来ないことだ。
ところがその裏側では、彼はこれをヒントにテレビへの復帰を模索した。
そしてマイケル・フラハティというNY市長補佐官の役どころで復活したのであった。
しかも彼は「スピンシティ」に製作者という立場で番組に参加。
制作会社も「バック・トゥ・ザ・フューチャー」以来付き合いのあるスピルバーグおドリームワークスなのであった。
病気療養に専念することを理由にチャーリー・シーンに主役を譲り番組を降板してからも製作に関与して活躍を続ける姿には感銘さえ受けるものがある。

先年「マイケル・J・フォックス ショー」というテレビシリーズで役者としても復活した。
パーキンソン病の治療目的で引退していたニュースキャスターが復活して活躍。
というコンセプトで、コメディのテンポも相変わらずの快調さだった。
ただ、今度はパーキンソン病の病状を隠さずに出演していたことが多少共影響があったのか、面白いけど「大変だね」と思ってしまうことも少なくなく、ひとつのシーズンで終了してしまった。

いずれにせよ、テレビの俳優から映画に進出し、そしてテレビに復帰した人気俳優は色んな意味で人びとに勇気と笑いを送り続ける。
映画と違って好きな時間に居間のテレビの前に座ってみるマイケル・J・フォックスアワーは近年少なくなったアメリカの良質なコメディを楽しめる貴重な時間なのである。




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