<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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日本製品は多機能万能で小型で省エネ。
私たちの生活に夢を与えてくれた様々な機能が日本の工業製品には組み込まれていて、それがまた西側先進諸国では市場を席巻してきたことは70年代以降を知るお父さん、お母さん世代の記憶だ。
電気製品は品質の頂点を極め故障しないし長寿命。
自動車はついにガソリン不要で家電のように自宅の電源で動くものまで登場し始めた。

でも、日本製品は売れにくくなった。
なんでだろう?と思っていたら、市場のニーズにを超越し、とりわけ新興国では欲しくもない高機能で高価格の製品に成り果ててしまっていたのだ。
それに為替レートが追い打ちをかけ、なんの発想もなく日本や米国のコピー製品を作っている韓国や中国に押されっぱなし。
元アイドルの小泉今日子まで中国家電のCMに出演する時代になってしまった。
情けないことこの上ない。
で、どんな製品が市場で売れているかというと、

「芋を洗える洗濯機」
「冷房機能だけ温度調節機能なしのエアコン」
「電気が来てなくても灯るライト」

なんかが売れているという。
でも、こんな製品は日本でも米国でも欧州でも必要ない。
新興国を中心とした発展途上国で初めて生まれるニューズなのだ。

このように発展途上国で開発されて、その土地でメジャーになる製品が最近は少なくないという。
土地の人の収入、風土、教育レベル、インフラ状況を把握して初めて売れる商品が生まれるという、この当たり前の事実に気づかない人が意外に多いのが今の日本。
昭和一桁が頑張った日本での成功事例が途上国で通用すると思うのが間違いで、それがドツボにハマる大きな原因になっているのだという。
考えてみれば昭和前半の日本は発展途上国ではなく、戦に負けた先進国。
ビンボーだったが今の途上国とはかなり違うのに、なかなか気づかない。
これも、戦後教育のなせる技かも知れないが、それは余談。

この途上国で生まれた製品が、最近は世界に広まり新しいトレンドを作る牽引役になっていることがあるという。
この現象は「リバース・イノベーション」と呼ばれている。

ゴビンタラジャン、トリンブル共著「リバース・イノベーション 新興国の名もない企業が世界市場を支配するとき」(ダイヤモンド社刊)は、そんな途上国発信の製品が世界に名だたるグローバル企業を脅かし、その経営戦略を変えてしまうという、驚くべきだが、よくよく考えてみると当たり前のことが事例を持って記されており、なかなか興味あふれるビジネス書であった。

私のように中小企業で働く人にとってグローバル企業の直面している問題など、関係ないと言いたいところだが、私はそれは全くの間違いだと思っている。
例えば、中小企業でもメインの業種が危機に面した時のために、他の事業に手をだすことがある。
私の仕事がまさにそれなのだが、その時に、自分の会社が曲がりなりにも発展してきたプロセスを新しい事業に応用すると得てして失敗することが少なくない。
市場に対する無知や、思い込みが大きく影響するのだが、このパターンがグローバル企業の途上国での失敗と酷似しており、大いに参考になる一冊であった。

なお、最終部分で途上国からのリバース・イノベーションが半世紀前の日本や韓国からのそれと同列であるようなことが書かれているが、これは心外であろう。
というのも、先述したように韓国はともかく日本は敗戦した先進国。すくなくとも列強の1つだったわけで、イノベーションしたというよりもデベロープしたもののほうが遥かに多い。
外国人が今もって日本を理解しきれていないこともよくわかったのであった。

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