<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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日本と台湾には正式な国交が無い。
無いけど、これだけ親密な二国間関係はきっと他のどこにもないのではないだろうか。

かねてから、日本と台湾の関係は「親戚の圧力で結婚できない相思相愛のカップルのようなもの」ではないかとの印象を抱いていた。
かつて、日本の領土だった台湾は今もその遺産をたくさん残している。
総督府や台湾大学といった現物はもちろんのこと、なんと日本精神などというフィロソフィーまで残しているのだ。
元総統の李登輝に代表される現代の日本人よりも日本人らしい多くのリーダーを輩出もしている。
日本時代の悪いところは否定されても仕方がない。
しかしどこかの国と違うのは日本時代の良いところもきっちりと評価して現在もなお、自国の文化に活かし続けているのだ。
その姿が、日本人の目から見ても「愛すべき人の国」という印象を与えている。

だからといって正式に国交を結ぶのは難しい。
日本人が「台湾は独立国家」と正式に発言すれば、海を挟んだ西側には広域暴力団が住んでいるので安易に宣言もできない。
だから、台湾が加盟できない国際機関へそのつど声を掛けては「私の大切な人ですから」と引っぱり上げるのが今の日本にできる関の山。

「結婚を許されない相思相愛のカップル」の印象はこの辺りから生じている。

今回、「海角七号」という小説を読んで、そんな感覚を新たにしたのだった。

終戦で内地へ引き返さなければならない日本人と、台湾に残らなければならない台湾人の恋人の物語と、今現在、台湾で生活している日本人とその台湾人の恋人の物語を巧みに交錯させる。
なかなか粋な筋書きだ。
そういった技法がとれるのも日本と台湾が持っている特別な関係があるからこそ。
作者は日台の歴史に明るいのだろう。
だからこそ心に訴える説得力は小さくない。

この物語を原作とした映画は本国台湾では空前の大ヒットを飛ばしたそうだが、なるほどと頷けるところが沢山あった。
多少筋書きに無理なところがなくもないが、帯の宣伝文句のように感動できるドラマであるに違いない。
但し、多少ライトな感じはしないでもない。

~「海角七号 君想う、国境の南」魏徳聖原作 ノベライズ 藍弋豊  翻訳 岡本悠馬・木内貴子 徳間書店刊~


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