<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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何の本だったのかは失念してしまったが、強い軍隊を持っている国には「食事が不味い」という共通点があるのだそうだ。

確かに美食の国フランスや中国は外国との戦争に「勝ちました」なんて話は近代史上とんと耳にしたことがない。ましてフランスなんかは自国民が頼りないからかどうか知らないが外人部隊なんてのがあるぐらいだから、美食は豊かさを育んでしまって戦うためのハングリー精神に乏しくなるも分からない。

その点アメリカは戦争に強い。
あっちこっちにちゃっかいを出しては酷い目には遭っているものの装備といい政治の手法といい強大な国力だ。
そしてその強大さを裏付けるように「メシが不味い」と誰もが断言できる没食文化を持っている。

アメリカ軍の特長はメシが不味くて強いだけではない。
グリーンベレーや海兵隊、さらには「超能力を有している者」ばかりを集めた部隊もあるというのだ。

ジョン・ロンスン著「実録・アメリカ超能力部隊」は第2次世界大戦後にアメリカ軍に実在した「超能力を持った兵士達ばかりを集めた部隊」を取材したノンフィクションである。
ノンフィクションだから多少創作が加味されているかも知れないが、作り話ではない。
作り話ではないがあまりに荒唐無稽のため笑うに笑えないノンフィクションになっているのだ。

「超能力部隊」が実在したこと自体、なにか食事の味と同様にアメリカという国の異様さの例のように思われてならない。

この異様さは本書の後半に身の毛もよだつ犯罪として描かれていく。
それは世界を騒がせた米国兵によるイラク兵捕虜の虐待行為だ。
男同士を無理やり搦ませて写真を撮らせたり、女性に辱めを受けたりしたところを撮らせたりという写真が公開された、あのグァンタナモ空軍基地での重大事件だ。

あの事件を起こした兵士達はこの超能力部隊と何らかの関係があり、そのため狂気ともいえるあの行為も平然と行なえたというのだ。
正直いってこの作品の見せ場はたった2つ。
冒頭の将校が超能力を発揮し、事務所の壁を通り抜けようとしてその壁に思いっきり頭をぶつけたときのエピソードとこの捕虜虐待に関するレポートだ。

「私は上官の命令に従ったまで」

という女性兵士の証言は超能力よろしく意図して作られた狂気が存在していたことを物語っていた。

タイトルだけ読むと「Xマン」みたいな世界が本当に存在していたような印象を受けるが、実際はアメリカ軍の裏社会を描いたネットリとした熱帯夜のようなレポートなのであった。

なお、本書たいへん読みにくい文章で構成されている。
どれくらい読みにくいかというと、読んでいるうちに別のことを考え事してしまい、本書を読んでいることを忘れてしまうほど読みにくいのだ。
それは原書の英文が最低なのか、それとも訳者に国語力がないのかどうかはわからない。
理由はよくわからないのだが、リズムが壊れ、かつ、語句は単純なのだが文章の構成が難解な文章で書かれていたのであった。
これからこの本を読みたいと思っている人はイラクのくだりが始まるまでの、残り5分の1ほどに達するまで読み続けることができるのかどうかが最大の難関だ。

~「実録・アメリカ超能力部隊」ジョン・ロンスン著 村上和久訳 文春文庫~

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