平ねぎ数理工学研究所ブログ

意志は固く頭は柔らかく

勝負手

2019-09-15 15:14:17 | 将棋

 

13日に行われた将棋(A級順位戦木村一基九段対佐藤康光九段)は熱戦でしたね。
途中までは木村九段が盤面を支配していました。
終盤の入口で勝勢となり勝利確定かと思われたところで大逆転が起きました。
評価値曲線をみてください。94手までは木村九段の完勝曲線ですよ。
95手目に木村九段が悪手を指して評価値曲線の崖から転落したわけですが、そこで何が起きたのでしょう?
次図が問題の局面です。

△7二桂打が佐藤九段が用意していた乾坤一擲の勝負手です。
この手自体は悪手です。ソフトが指し継いでいたら万に一つも勝ち目がなかったでしょう。
でも相手は人間です。だからこういう間違いが起きるのです。
この手のすごいところは最善以外の応手はすべて悪手になるという点です。

具体的に見てみましょう。
△7二桂打に対する応手と評価値はつぎのとおりです
最善手 7五桂打 1726
次善手 9四桂打 -284
            7三歩成   -434
    7三馬     -476
木村九段は最善手を見つけることができず次善手を指してしまいました。
勝負手とは、それ自体は悪手だが、その手に対する正解は一つしかなく、
正解以外を指せば相手は直ちに負けになるという恐ろしい罠なのですね。