坪田譲治文学賞を受賞した児童文学作家の長谷川摂子さん死去、ご冥福を祈る
「長谷川摂子さん(=児童文学作家)が18日に骨髄線維症のため死去」していたことを、昨日の新聞がいっせいに報じている。「67歳。葬儀・告別式は近親者のみで済ませた。喪主は夫で哲学者の宏氏。代表作に絵本『めっきらもっきら どおんどん』などがある。『人形の旅立ち』で坪田譲治文学賞、椋鳩十児童文学賞、赤い鳥文学賞を受賞した」と報道している。
長谷川摂子さんの坪田譲治文学賞の受賞は、私が担当していた時だけに、鮮明に記憶している。この時の候補作には、芥川賞を受賞した綿矢りさなども候補作に入っており、ワクワクしながら選考委員会の議論を聞いた思い出がある。
他の候補作の作家に若い人が目立つ中で、年齢的には50歳後半であった長谷川摂子さんの『人形の旅立ち』は、静かなトーンの素晴らしい作品であった。ただ、その頃の坪田譲治文学賞の受賞作家は、芥川賞や直木賞といった「次なる飛躍へのステップの賞」的な意味合いもあり、正直私的には綿矢りさの受賞を期待していた。
ところで、その当時の坪田譲治文学賞の選考委員会の開催は、芥川賞の選考委員会よりも早かった。ただ、記者発表は選考委員会直後(芥川賞は当日発表)ではなかった。そのため、もしも綿矢りさが芥川賞とW受賞した場合には、先に芥川賞受賞が発表されることを恐れ、その年だけ発表を早める準備をして選考委員会に臨んだ。
その選考委員会では「文壇のモーニング娘。づくりには組みしない」等との発言もあり、最終的に長谷川摂子著『人形の旅立ち』が選ばれた。一方綿矢りさは「札蹴りたい背中」で芥川賞を受賞した。
まだ長谷川摂子さんに個人についても思い出がたくさんあるが、また機会があれば書きたいと思う。ともあれは、早すぎる旅立ちをされた長谷川摂子さんのご冥福を心から祈るのみだ。
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