”未曾有の大災厄”により世界中が混迷を極める現代。東京で新聞奨学生として暮らす青年・スズシロウは、誰にも言えない秘密を抱えていた。高校三年の夏に起こったある事件をきっかけとして、自分の意志とは無関係に周囲の時間を止められるようになってしまったのだ。
そんなある日、スズシロウは初めてその秘密を分かち合える相手と出会う。自分と同じく、心に傷を負い、時間が止められるようになってしまった少女・なずな。彼女が兄の芹によって犯罪に利用されていることを知ったスズシロウは、衝動的に手を差し伸べる。「……君、ここから一緒に逃げよう!」
止まってしまった時間を、二人は再び動かすことができるのか。
WOWOWオリジナルアニメの劇場公開である。イオンシネマ浦和美園にでかけてきた。
SF,ポリティカルフィクション,ラブストーリー
正直にいって、全部中途半端な感じがする。ジャンルにこだわらない新しい考え方とも言える。ただし-劇場公開作品としては-いくつか設定が不明瞭な部分があると思う。感想をいくつか。
周囲の時間を止められる
基本的な主人公の「能力」として是非もないが、どこまでの範囲が止まるのかがよくわからない。
タグラインでは 周囲のとあるものの、場面場面で止まっている範囲がずいぶん違った。
未曾有の大災厄
全く現実世界とははなれた、ものがたり世界独自の設定かと思い込んでいた。どう見ても東日本大震災である。
復興対策への不満が、反政府集団831戦線が活動する端緒となる。
時を止められる二人
ものがたりは、時を止められる浅野スズシロウと橋本なずなとを中心にまわる。そのこと自体は問題ない。ただし、全体としてやはりものがたりのジャンルが不安定で、揺れているように感じられた。
部分部分ではおもしろい
全体的にブツ、ブツと区切れている印象が強い。831戦線は「自分たちの正義、目的」のため、総理大臣を誘拐、身代金10兆円を要求する。そのあとに政治的決着があり、時間を止めることができる二人は、新たな人生を歩み出すことが示唆される。
何か ”引っかかり” がなく、す~っと終わってしまう。
背景の細かさに見合う人物の描き方はできていない。
僕は昨年「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」の感想で、こんなことを書いている。
背景のこまかさ
新海監督作品、ヴァイオレット・エヴァーガーデンに通じるのだが、背景(街、建物、海)の描き方の細密さがすごい。キャラクターの人間が一番人間らしくない(アニメだけど)ことが、目についた。
本作は東京都内(山手線エリア)高田馬場から渋谷エリアが舞台である。主人公スズシロウの大学は早稲田大学のようだ。
背景を細密に描くことが最近のトレンド。でも、キャラクターの動きが時々とんでもなくぎこちない。10年、15年前のCGアニメのようで、背景の細密さに完全に負けている。ここはいただけない。
スズシロウとなずなの服装が、全編通じて基本的にはほぼ同じ。特になずなはずっと制服のまま。