全英連参加者のブログ

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京都市立塔南高、教員養成学科(?)を新設…07年度

2005-10-23 06:18:24 | 気になる 地方自治・行政

 細かく調べるのにちょっと時間がかかってしまった。
 京都市立の高校に教員養成学科なるものができるらしい。以下、読売オンライン、共同通信社ウェブサイト、京都新聞の記事を参考に、何がどうなりそうなのかまとめ、自分の意見を書くことにする。

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…読売オンライン…
【京都市教委は5日、2007年度に市立塔南高(南区)に教員養成学科を設けると発表した】
 記事によると以下のような状況で、京都市教委が市立高校に新学科を作ることになったらしい。
  ↓
 団塊の世代が退職。教員の大量採用が予想される。質の高い教員を育成する。高校の教員養成の専門学科は全国初(市教委)

 初年度は1学級(40人)予定。主要5教科のほか、教育に対する情熱や子どもを愛する教員を育てるために次のようなことを行う。
  小、中学校を訪問。交流。
  福祉施設でボランティア体験
  カウンセリングの基礎を学ぶ。
 …教科学習に加えて体験型の科目をカリキュラムに取り入れる。
 市教委、「子供と意思疎通を図れる人間性豊かな人材の育成を目指したい」

…共同通信社…
【高校に教員養成の新学科 京都市、07年度に開設】
 京都市教育委員会は5日、京都市立塔南高校(京都市南区)に教員養成のための「教育学科」(仮称)を2007年度に新設と発表。近く京都府に設置認可申請する。
  ↓
 政令指定都市である京都市が自前の学校の学科転換をするのに、府の認可がいるとは知らなかった。

 市教委によると、奈良県の県立高校で06年度から普通科に教員コースを設けるが、高校の教員養成学科の設置は全国初。
 1学級40人を予定。教師に求められるコミュニケーション能力の育成に重点を置いて、カウンセリングの学習や市立小中学校での実習なども実施する計画。
 このあたりは、読売オンラインと同じだね。

 府内の教育系大学・学部とも連携できるよう今後、働き掛ける。
 …ここは見逃せない。(笑)

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 職場で教頭に記事を読んで、反応を見たらやはり顔に?マークが浮かんでいた。まさかこの記事を読んで、この高校に行けば卒業時に何かの先生の免許がもらえると思う人はいないと思うけど、不親切な感じがする。読売新聞はつっこみの足りない記事だと思う。
 そもそも教員養成学科とは何かぼやけている。発表をそのまま書いたような印象を受ける。
  ↓
 現職の高校教師が読めば、これは専門学科(昔の言い方をすれば職業科・商業科とか工業科)のことなのかと思う。この高校は市立普通科単独高校。その学校が学科転換をして、1クラスが「教育(学)科」になるんだろうとわかる。
 読売の記事と共同通信社の記事の一番の違いは、「府内の教育系大学・学部とも連携できるよう今後、働き掛ける。。。」の部分である。現在の教育職員免許法がこのあとどのように変わっていくかわからないけど、教員免許状(保育士も)を得るためには、高卒では無理なのだ。読売の記事はここの詰めがちょっと甘い。
 理想としては教員養成系。それに加えて教育系進学類型の専門学科ということなのかな。

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…地元京都新聞(ウェブサイト)… そのまま引用
【情熱のある教員を1人でも多く 塔南高、教員養成の学科】
 【解説】京都市教委が塔南高に教員養成系の専門学科を全国で初めて設ける方針を打ち出した。団塊世代の大量退職で教員不足が見込まれる中、「情熱のある教員を1人でも多く京都の教壇に立たせたい」という狙いとともに、教育系大学を軸に進学率を高めたいという思惑も見える。
 京都市立小では40、50代の教員が7割以上を占め、今後、退職に見合うだけの新規採用が質、量ともに不可欠になる。しかし、偏差値本位の進路指導や学校現場が抱える課題の多様さなどから、教師という職業を敬遠する傾向も見られる中で、「教員になりたいという高く強い志を持つ子を自ら育てることが、教員の質を高める上で大事」(塔南高・明尾惠校長)と判断した。
 奈良県立高は普通科の中に教育コースを置くが、市教委は専門学科を設置する。府内全域から優秀な生徒を推薦入試で先取りできるメリットを生かす狙いだ。府内の公立高が来春、進学に特化した専門学科を相次いで設置することで、塔南高側に「優秀な生徒がみんなそうした学校に流れてしまわないか」との危機感があったことも事実だ。
 市教委学校指導課は「早い段階から職業意識を磨くことで、高い資質を備えた教員の卵を育てたい」と期待する。ただ、優れた人材を輩出するためには、教員が生徒に対し、教職の魅力を実際に示すことも必要だろう。-10月5日16時30分

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 学校設置者(京都市)の思惑のよくわかる記事で、やっぱり地元新聞だなと思う。
 団塊世代の大量退職に向けた準備であると書かれているけど、これは半分ホントで、半分はウソ(建前)である。来年高校に入学する生徒が、教壇に立つのは早くて5年(高校3年、短大2年・保育系なら3年も)後、遅ければ-ほとんどが-7年(高校3年・大学4年)後である。下手をすれば教職大学院まで行くかも知れないし... 先生はそんなに早くは作れない。
 教育系大学を軸に進学率を高めたいという思惑も見えると記事にあるが、「思惑も」じゃなくて「思惑が」かもしれない。
  ↓
 別にこのような発想は間違いじゃない。否定もしない。高校の生徒募集も、きれい事だけではすまないから。

 偏差値本位の進路指導や学校現場が抱える課題の多様さとの記述もある。この場合は、後者が問題だろう。まともに先生たちの仕事を見ていたら、勤めようと思う方が少なくなるのが当たり前である。教職の魅力を示すにもなにも、「土日もなく9 to 5じゃなく7 to 9」みたいな仕事なんて、警察より勤務条件は無茶苦茶だし、災害派遣の自衛隊だって、もう少し仕事の振り分けができるはずだ。残業手当もない仕事だってわかったら、なかなか目指さない。最低限、授業準備のための時間と、体の余裕が持てない状況が当たり前の学校の方が多いのではないだろうか。少なくとも埼玉県の公立学校はそうだと思う。中学校はさらに多忙を極めるぞ。
  ↓
 自分の子どもが教師を目指すと言ったら、うれしいかも知れないけど、よく調べるように言うだろう。

 同校は文部科学省の『学力向上フロンティアハイスクール』に指定校されるような学校だ。普通に考えれば優等生の集まる学校だし、いろいろな意味でいい学校のはずだ。
 延べ数だとは思うが、ウェブサイトで発表されている進路実績もかなりのものである。少なくとも国公立20人前後が現役で合格するのは、埼玉県だったらアカデミックレベルは中位ではなく、上位グループにいる学校である。
 この学校ならば、「教員が生徒に対して、教職の魅力を実際に示す」こともできるかも知れないが、、、この学校に進学してくる中学生が通っている学校の先生に、「教職の魅力を実際に示して」、市立塔南高教員養成科に行きたい、先生になりたい思うようなパフォーマンスをしてくれというのは、ちょっと-絵空事とまでは言わないけど-酷かもしれない。精神論的で気分がよくない。
 その上、事務職よりも給与水準が高いことのバッシングを考えたら... 教師を目指すのはためらうと思う。世の中札束が人間の姿をして跋扈しているような有様だからね。

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 この新専門学科の設置が、本来目指す-少なくとも世間に宣言した-教師作りの第一歩を踏み出すことを可能にするものになるのか、それとも文系進学類型先生希望者類型になってしまうのかは全くわからない。
 どちらにしても集まってくる生徒の、集団としての志向がどう向いていくかによって決まるだろう。教師の力(誘導)は、生徒にあまり影響を与えられるものではない。よく考えられた教育課程と施設設備、実習先、充実した学校生活を送れるように、市教委はがんばってほしいものだ。

 期待はしたい。注目もしたい。でも、どうなるんだろう。
 …本当のところはわからないな。


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