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tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

点滴中

2008-03-20 21:25:39 | 日記

応急処置を受けた病院で貸してもらった松葉杖と、そしてここの病院で手術後に貸してもらった車イス。ぼくは2種の機動力を得て、未だに点滴を受けているというのに病院内のあちこちウロツキ回り、ナースたちにあきれられた。
とはいえ、整形外科の入院病棟の廊下は、リハビリのため動き回る患者であふれかえっているのだが。

点滴は針に繋がったチューブの一方に、点滴の薬剤の入ったポリのバッグをつなげて行う。つまり、点滴が必要のない時は、チューブの途中で切り離して腕に留めておき、何度も針を血管に入れ直さなくても良いようになっている。針は常に腕にささったままなのだ。
この状態で松葉杖などをつくと、腕の筋肉に力が入り血管が収縮することにより腕に刺したままの点滴の針を通して血液がチューブ内に逆流することになる。最悪の場合には、チューブや針に凝固した血液が詰まって次回の点滴ができなくなってしまう。そうすると、また腕にあらたに針を刺し直しとなるので、M嬢から今日一日、点滴が終わるまでおとなしくしていてねとのお願いをされる。
そして、夕方の最後の点滴。化膿止めの小さな点滴バッグは1時間ほどで滴下できるらしい。
ベッドにおとなしく横たわったぼくの腕のチューブの先にその点滴バッグが接続されると
<点滴が終わったら呼んでくださいね>と言い残してM嬢は去っていった。
点滴が終わるまでおとなしくせざるを得ずヒマなので、持ってきたポータブルDVDプレーヤーをベッドのテーブルにセットして映画を鑑賞。観たのは台湾のドラマ。トニー・レオンと金城 武が出演する『傷だらけの男たち (傷城)』。連続殺人事件を捜査する刑事もののアクションドラマだった。

ドラマを観ている途中、ふと気がつくと最初は調子よく落ちていた点滴のしずくが止まっている。
「ヤバイ」
ぼくはうろたえて、点滴の速度を調整するピンチコックの閉め具合をいじってみたものの、全く滴下する気配はない。
どうしよう。
一瞬、躊躇した後に入院後3回目のナースコールボタンを押す。
M嬢が元気な声で
「どうしました?」
と聞いてくる。
「あの・・・・・。点滴が止まったんすけど・・・・・・」
M嬢はすぐにやってきた。
これこれこういう具合におとなしく寝ていたんすけど・・・・・・。気がついたら、点滴が止まっていて・・・・・・・。
しどろもどろで説明するぼくを横目に、M嬢は微笑んでチューブをつまむ。
圧力を増した点滴の液が腕に刺した針を圧迫し、針を刺した箇所がかなり痛いのだが、点滴液は続けて滴下してこない。
「怒られると思ったのね」
M嬢は微笑んで、腕から針を引き抜くと新しい針へ交換し、腕の血管の別の場所に刺しなおし。見事な手さばきで注射針を腕の血管に打つ。
結局、新しく点滴針を血管に差しなおすことで点滴の全工程が無事に終了。ぼくはジャンキーのように腕に注射だこを作らずになんとか点滴を切り抜けることができた。

ナース達はたくさんいて名前を覚えるのすら大変だったが、ぼくがピンチの時にどういうめぐり合わせなのか、M嬢はいつもその現場にいた。たとえばシャンプーや入浴など、片足が不自由だとどうしても一人でできない時には、ナースたちの手を借りざるを得ない。そこでナースステーションにいる誰かにお願いに行こうとすると、その途中でいつも彼女とすれ違う。
というか、正確に書くのなら、忙しそうにしている他のナース達に声をかけそびれ、M嬢とすれ違ったらここぞとばかりにお願いしまくったというのが正しい。思えば、まるで彼女のあとを追いかけている雛鳥のようにだったかもしれない。前にも書いたが、入院初心者のぼくは、困った時は彼女に頼めば、そんなにひどい目に会わないとの”刷り込み”学習を受けたのだろう。

コメント
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