goo blog サービス終了のお知らせ 

tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

愛は奇跡(13)

2007-02-19 20:00:10 | 日記
だれもが何が原因だったのか理解できなかった。3日前にはオードリーはなんの障害も無くほぼ同一の潜水を行ったのだ。彼らは、潜水の記録を取っていたキムのデータを調べた。潜行は完璧に行われた。ウィキィは、彼女が予定よりも早く90mを通過したのを覚えている。深い海の底でも、すべてが時計仕掛けのように進行した。最初の2~3秒はともかく、パスカルはオードリーがスレッドの錘の部分を切り離すためピンを引き抜いたのを見ている。そして、問題なく錘の切り離しができている。
オードリーはポニータンクと呼ばれる小さなタンクのバルブを開けたが、リフト・バッグは膨らまなかった。実際、この時少しだけ彼女は沈降している。パスカルはタンクからまったく空気が出てこないように見えたと言う。
タンクが空だった?それはあり得ない。ピピンはタンクが充填されているのを確認している。ピピンはバルブを空け、シューッと空気が出る音を聞き、空気がリフト・バッグの中に注入されることによってカサカサ言う音さえ聞いている。
<タンクをチェックした?>カルロスがたずねる。
<ああ、やった>ピピンが答える。
タタは、ボート向かってにポニータンクにエアを充填したかどうか聞いたところ、誰かが<<Yes>>と答えたことを明言した。
<誰が?>カルロスがたずねる。
<わからない>
タタだけではなく、ピピンもその声を聞いていた。
その場にいた誰もが、互いを見やった。誰もがその声が誰のものかわからず、しかも、誰もその答えを発していないのだった。事実は、チームの誰一人とも、そのタンクの充填について責任を負っていなかったことだ。彼らはチームであり、いつもチームで行動している。ある日、ピピンがタンクを確認すれば、別の日にはタタが、あるいはウィキィやカルロスやマットが確認する。彼らのやり方はいつもこうだったが、それまでは失敗はなかった。
カルロスはパスカルに注意を戻した。
<次になにが起こった?>
<オードリーを助けようと泳いで近づいた>パスカルが答える。
<彼女は一時的に目を見開いたが、パニックにはなっていなかった。彼女はスレッドを押し上げようとしていたが立ち往生した。だから、わたしも押し上げようとした。>
キムの記録によれば、パスカルとオードリーはスレッドと格闘して、かろうじて2m押し上げるのに17秒費やしている。そして、パスカルはもう一つのレギュレータを使って彼のタンクからリフト・バッグに空気を入れた。スレッドは、少しだけ上がり、165mになった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする