彦四郎の中国生活

中国滞在記

世界の自動車産業の動向➌—日本自動車メーカー関係者も認める「中国EV・SDV車の優位性」

2024-05-25 20:13:09 | 滞在記

 4月25日から5月4日まで開催された中国の「北京国際モーターショー」。現地を訪れた日系自動車メーカーの各社幹部からは、「明らかに日本が遅れている分野があることを認めざるを得ない」という声も挙がっていると報道さけている。具体的な遅れている分野とは特に「SDV」の分野。

 「SDV」とは、クルマの車載OS(オペレーティングシステム)を軸として、エンタメ、電動化、自動運転技術などを総括的にデーターマネージメントする仕組みを指す。要するに車の運転席・ハンドル周辺にある電子機器の機能分野である。

 中国はファウェーなどの世界的携帯電話などがあり、ソフトウェア―などのIT・AI開発も世界の最先端を行っている。特に中国の強みは、中国政府が自動車産業とIT・AI産業に対する影響力が強く、それらの産業分野を一体化させながら自動車製造に国策として力を入れられることだ。

 実際に最新の中国のEV車などに同乗させてもらうと、その「SDV」機器機能の先進性(ハイテク性)には驚かされる。

 中国の通信機器大手の「ファーウェー」(華為技術)は、自動運転などのスマートカー技術で協業する自動車メーカー(中国の自動車メーカー)を増やしてきている。(※日本のトヨタもファーウェーと協業提携を結んでいる。)

 世界の自動車産業の世界の動向は、自動車の「SDV」機器機能の先進性もまた、その販売力の成否に大きく関わる世界となってきているようだ。

■上記の二つのグラフは、2022年~24年の「EV車」の世界の販売台数。アメリカの「テスラ」と中国の「BYD」がダントツの上位を占めている。22年までは「テスラ」が首位だったが、その後、23年からは「BYD」が首位を独走してきている。

 ―世界PHEV戦争が始まっている―

 2020年から24年にかけて、世界的に販売シェアを広げてきている中国EV自動車やアメリカ・テスラ社EV自動車。だが、最近になってそれらのEV車のデメリット(問題点・課題)も明らかになりつつあり、EV販売の失速も始まってきたとも指摘される。そして今、新たに世界の注目を集めた自動車が北京国際モーターショーで展示された。それは、中国自動車メーカー「BYD社」の「秦」。"脱炭素の現実的解決版"の切り札とも呼ばれる「PHEV」(プライングインハイブリッド自動車)だ。(※中国の自動車名には、中国の「唐」や「宋」などと王朝名を名付けるものも多い。「秦」もその一つ。)

 「PHEV」車とは充電可能なハイブリッド車で、近場ではEV車として活用でき、遠出はハイブリッド走行が楽しめる。電欠の心配もなく、環境性能にも優れている。この"脱酸素の現実的解決版"の現実的使い勝っ手の良さが消費者に受け、販売台数を大きく伸ばし始めている。

 北京国際モーターショーで展示されたBYDの「秦」は、なんと価格が7万9800元(約160万円)と安い。日本市場だと軽自動車の価格で、この値段にメディアやSNSには「日本車キラー登場」とか「中国市場から日本車が駆逐される」という声も報じられていた。

■「新エネルギー車」―中国独自の定義で、電気自動車[EV]、プラグインハイブリッド車[PHEV]、燃料電池車[FCB]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない。

■中国の「BDY」社などの新型車やアメリカの「テスラ」社などの車は、車体の外観がとてもスマートですっきりしているものが多い。これも現在、世界及び中国での販売シェア拡大につながっているようだ。今日5月25日、私のアパートに来た中国の20代後半の男性と話していると、「この外観の良さも、シェア拡大のとても大きな要因の一つになっています」と話していた。(※ドイツのポルシェのような外観の自動車も増えてきている。日本車などは、この外観の新しさという点でも中国などの消費者の心をつかみあぐねているのかもしれない。)

■BYDのEVバスが「2階建てロンドンバス」にも登場

 BYDは5月21日、新型の2階建てバス「BD11」をイギリスで発表した。電気で走るバッテリーEVで、新しいロンドンバスとして採用される。BYDとしては、世界に向けてものすごく良い宣伝にもなるだろう。

■アメリカのバイデン大統領は5月14日、中国製EVに対して関税を現在の25%から100%に引き上げると発表した。(2024年8月から実施)  新たな米中貿易戦争の始まりでもあり、貿易戦争の拡大となる。

■YouTubeの放送より—「EVの問題(課題)が認識され始め、EV機能だけの自動車販売シェアは減速し始めている」の概要

 問題が次々と明らかになるにつれ、EVに対する不安が大きくなってきている。そのためEV市場は急速にその規模を縮小しつつもある。EVのみの販売を行っている企業(テスラ社など)は、非常に苦しい状況。ただ、中国のBYDはその中でも奮闘している。EVだけでなく新たにPHEV車の販売などがその例だ。

 しかし、中国では最近、EVを購入した人たちの間での不満を持つ人が増えてきている。2024年版のあるレポートでは、不満を持つ人が22%に。特に、地方・農村部では「購入を後悔している」%が、54%と高いとの報告。

 まあ、このYouTube報道の真偽のほどは私には分からないが、単なるEV車だけの自動車販売は頭打ちになりつつあることは確かなようだ。特に「EV」しかないテスラは厳しい状況が始まっている。