彦四郎の中国生活

中国滞在記

電動バイクが大氾濫、今の中国❸―電動バイク充電に伴う火災発生が多発、私のアパートでも—自転車の波から電動バイクの波への中国の歴史

2023-04-29 10:38:12 | 滞在記

 2021年の日本の朝日放送系の「ABEMA NES」でも、「中国 電動バイク29台が燃える」と題されたニュースが報道されていた。この火災は、建物の外に設置されていた電動バイクの充電場で、夜間の充電中に起きた火災だった。30台余りの電動バイクの同時充電のために、電気コードが過熱しすぎ、電動バイクのコンセントから猛烈な火花が出て、次々と電動バイクが燃えるという事態になったのだろう。

 この4月23日の早朝3時頃に突如として起きた、私が暮らすアパートマンションの半地下で発生した火災もまた、この電動バイクの集団充電による火災だった。この3年間での電動バイクの驚くべき増加によって、中国の全国各地で、このような火災が多発してもいるようだ。

 ―自転車の波から、電動自転車の波へと、中国の歴史は移り変わった—

 1980年代に入り、中国は「改革開放路線」へと大きな舵(かじ)をきり、経済発展が大きく進み始めた。1980年代から90年代、この中国の人々(庶民)を象徴する光景が、通勤時間帯のおびただしい「自転車の波」「自転車の川のような流れ」だった。このような自転車を多くの人が生活の足として使う時代は2015年ころまで続いた。(2000年頃からは、自家用オートバイ、2005年頃から自家用車が少し普及し始めた。また、2010年ごろから電動バイクも少し普及し始めた。しかし、人々の生活の足の中心は自転車だった。)

 そして、2017年になると突如、数社による「レンタル自転車」産業起こり、中国全土でまたたく間に広がっていった。それは、ものすごいスビートでの広がりだった。街中にレンタル自転車が走っていた。レンタル料金はたったの1元(当時は18円)。これは、スマホによる買い物での支払い(スマホ決済)の全国的な普及にともなって実現できた商売だった。レンタル自転車もスマホ決済だった。このレンタル自転車は、何時間利用しても1元、どこに乗り捨ててもよいという、とても利用がしやすいものだった。だだっ広い大学構内でも、このレンタル自転車は、移動するのにとても助かった。

 どこでも乗り捨て自由であったがために、このレンタル自転車は利用者に乱暴に扱われることも多く、街中に壊れてしまった自転車も多く見られるようになっていった。2019年になると、街のいたるところに、「レンタル自転車の墓場」と言われる廃棄されるレンタル自転車が大量に積まれている光景が見られるようにもなっていった。そして、レンタル自転車の大手会社の数社が倒産するということにもなり、もうこれでレンタル自転車はなくなっていくのかなあという感もした。

 3年ぶりに中国に戻ると、規模は少し小さくなってはいるが、今もまだ、レンタル自転車は健在だった。(主に3社のレンタル自転車[緑・青・黄色])   そして、レンタル自転車のレンタルの仕方がかなり変わっていた。スマホ決済は同じだが、街中や大学構内などのいたるところに白ペンキで書かれたエリアに自転車を置くというシステムに変わっていた。レンタル料金は、30分以内なら1.5元(約25円)になっていた。また、使った後に自転車を決められた駐輪エリアに置くことが必要となった。

 これをしないと、スマホでの決済ができなくなる(スマホに、位置情報が示され、「ここは駐輪エリアではありません。このため決済ができません」と表示される。)ため、延々と、使用時間が延長され、料金が加算していく。このため、利用者は決められた駐輪エリアに行儀よく置くようになり、壊れる自転車は激減していた。以前に比べるとスマホでのレンタル操作は煩雑になったが、やはり、レンタル自転車は、広い大学構内や、アパートから徒歩20分ほどかかる大型スーパーに買い物に行く際には、とても便利で助かっている。

 そして、中国の2023年の今、電動自転車(電動バイク)が、自転車を大きく上回って、中国の人々(庶民)の足となり、電動バイクが川の流れのように、波が押し寄せるように中国国内の街に溢れかえっている。歩道もおちおち安心して歩けず、通勤時間帯の横断歩道は、命がけで渡るという光景となっている。

 「Yahoo Japan!」に、「日本とけた違い!中国の電動バイク保有台数3.4億台突破、‥‥なぜ爆売れするのか?」という記事(2023年4月22日配信)があった。この記事に対して、日本在住の人のみならず、中国在住の日本人からも、次のような多くのコメントが寄せられていた。

 ●「20年くらい前に仕事で中国に行った時に通勤時間に自転車の集団が通勤しているのを見て、これが自動車に代わったら大渋滞になるだろうと考えた。この記事を見ると自転車が電動バイクに置き換わっているのではないかと思う。免許もいらないしエコというのは完全に自転車の延長線上にある。」、●「現地にいますが、都市部と違って交通マナーが悪いので最悪ですよ。日本でも自転車のマナーが問題になっていると思いますが、それが自転車よりも重くてパワーのある電動自転車で起きるのです。こいつらが、車道、歩道関係なく走り廻っている光景を想像してみてください。私は怖くて仕方がないので、できるだけ街歩きは避けていますし、出歩くときは相当警戒しています。」、●「原付相当の動力性能、使い勝手で、免許もナンバーも保険もヘルメットもいらず、歩道走行もOK、駐車違反も速度違反も取り締まり対象外。そんな便利な乗り物があれば、そりゃ売れるにきまってる。」

■電動バイクは、バイクに二人乗りができる足置きが付いている。日本の原付50ccバイクは二人乗りは禁止されているが、中国では二人乗りは当たり前だ。三人乗り、四人乗りも時々見かけるが、取り締まりの対象外。四人乗りの場合、電動バイクの運転者の前にしゃがんでいる人が一人、後部シートに乗っている大人と運転者の間に挟まって乗っている子供などが一人、合計4人となる。私が中国滞在10年余りで見かけた最高乗車数は5人だった。これにはびっくりした。(これは、電動バイクではなく、250ccくらいの中型オートバイ。福建省福州市の田舎の山間地区で見かけた。)

 その中型バイクを使った「バイクタクシー」を商売にしている人もいる。私も大学に通勤する時に、時々利用するのだが、料金はタクシーよりも少し高い。また、雨の時は、バイクの上に、「前方後円墳」のような形をした傘を立てて走りもする。3年ぶりに中国に戻り、電動バイクの大普及もあり、この商売をしている人もほぼいなくなったかなあと思っていたら、かなり減少したが、この商売をしている人が現在もいた。アパート近くのバス停から43番バスに30〜35分ほど乗り、博仕後家園というバス停で下車し、95番バスに乗り換えて25分ほと乗ると、大学正門(南門)近くのバス停に至る。バスの料金は1元(約17円)ととても安い。

 だが今も「バイクタクシー」の商売をしている、5〜6年前からの顔見知りのおっちゃんが、私がこの博仕後家園のバス停に、木曜日と金曜日は午前7時頃に下車して、95番バスを待っているのを知り、毎週木・金のこの時間にどこからともなく現れるようになった。当然のように乗れという。「料金はいくら」と聞くと、「20元(約340円)」だと言う。「高すぎる」と言うと、「15元にする」と言う。それ以降、雨が激しくない日以外の木・金には、このバイクに乗せられるようになってしまった。ただ、このバイクタクシーに乗ると、7〜8分で大学に着くのでとても便利ではある。(※午前6時にアパートを出て、6時半発の43番始発バスに乗って、このバイクタクシーを使うと、なんと7時10分頃には大学に到着できてしまう。授業は、午前8時半からなので、大学構内をゆっくり散歩しながら研究室に向かい、研究室でしばし珈琲タイムもとり、大学の授業棟[徒歩15分]に行くことができる。ただ、このバイクタクシーも、けっこう信号無視をして走っているが、私はそれには慣れてしまっている。)