彦四郎の中国生活

中国滞在記

電動バイクが大氾濫、今の中国❶―歩道も、おちおち歩けない、横断歩道は冗談なしに命がけ

2023-04-27 05:52:52 | 滞在記

 3年ぶりに中国福建省の省都・福州市(人口700万人超)に戻り、いくつかの大きな変化が街や大学に起きていた。その一つが、電動バイクのすごい増加というか、まさに大氾濫だ。3年余り前の2019年にも、かなりの電動バイクが町中を走っていたのだが、その当時の2〜3倍には、その数が増えたという感じがする。

 特に通勤・通学時間帯の午前7時頃〜8時半頃、午後5時頃〜6時半頃までは、道路は電動バイクが川の流れのようにというか、洪水の水の流れのように、ビュンビュンと密集しながら走っている。電動バイクの氾濫だ。よくも、電動バイクどうし、電動バイクと車との接触事故が起きないものだと、その運転操作の中国人たちの巧みさには感心させられるくらい、みんな、接触したりしないように、テクニックがとても上手だ。

 歩道もおちおちと、安心して歩けない。歩道でも電動バイクが前から後ろから、走っている。しかもこの電動バイクは音がしないので、後ろから走って来ても気づかない。この電動バイクの正式な名前は「電動自転車」。自転車のように小さなペダルもついているのだ。日本にも電動自転車はあるが、それとは名前は同じでもまったく違う。小さなペダルはついているが、まさに原付バイク(50cc)そのものだから、時速も50kmはゆうに出る。法規上は「電動自転車」という扱いになっているので、歩道を走ることも許可されているし、飲酒していても乗れるという代物(しろもの)だ。

 この中国式電動バイクは、2013年に中国に赴任した時から町中で見られたが、まだその台数はそれほど多くなかった。一度、歩道を真っ直ぐに歩いている時に、ほんの少し左側に歩く方向を無意識に変えた時、後ろからまったくの無音で近づいていたらしい電動バイクに体を当てられた。体の全身ではなく、部分的な衝突だったので転倒などの大事に至らなかったが、電動バイクを運転していた人は、「すみません」「大丈夫ですか」などの言葉は一言もなく、「お前の方が気をつけろ!」という態度で走り去っていった。

 この時以来、中国では歩道を歩く時には、絶対に真っ直ぐに歩くこと、少しでも方向を変えて歩こうとする際は、必ず後ろを瞬間的に振り向いて、後方を確認することを意識するようになった。

 交差点の横断歩道を渡る時は、冗談掛け値なしに「命がけ」というか、毎回、命が縮む思いとなる。電動バイクが横断歩道を埋ずめながら走って行く。その中を前後左右、360度、気をつけながら横断歩道をわたらなければならない。電動バイクに乗っている人は、ほぼ信号を守らない。信号が赤でもあっても、少しでも走り抜けられそうだったら走って来る。逆方向からも走って来る。つまり360度から横断歩道を走って来るのだ。しかも、中国の道路法規では、赤信号でも、右折する場合は右折が可能だから、信号に右折車も走って来る。

 日本では、「人優先」の道路事情だが、中国では「車や電動バイク優先」の社会だなあと、つくづく思わされる。日本に旅行に来た中国の人たちは、日本の「人優先」の道路のようすに、面食らうかと思われる。安心して歩道や横断歩道を歩ける日本の社会に、ある面、癒されたりもするだろう。そんな社会のようすに魅力を感じて、再び日本に旅行する中国の人たちも多いのかなあとも思われる。この3月に日本の旅行調査機関が実施した、「海外旅行に行くとすれば、どの国に行きたいか?」という調査(中国人1500人余りにアンケート)では、1位日本、2位カンボジア、3位シンガポールという結果になっていた。

 3年前には、大学構内で、電動バイクが走っていることは、稀(まれ)だったのだが、3年ぶりに戻ってみると、ものすごく電動バイクが構内を走っているのだ。だが構内はだだっ広いので、街中の歩道を歩く時のような危機感は少なく、かなりゆったりした気持ちで歩くことはできる。