7月23日(金)に行われた東京五輪開会式だが、翌日24日付の日本の大手新聞各社の一面での、東京五輪に関する報道姿勢は2極化されていた。朝日と毎日は新型コロナ第五波感染拡大をトップに置き、続いて東京五輪開会式を報道。読売と産経と日経は東京五輪開会式をトップに置き、続いて感染拡大を報じていた。スポーツ各紙は日本代表の男子サッカーとソフトボールの活躍を一面に掲載。
私が数十年間にわたって定期購読している朝日新聞などはこの間の東京五輪の開催に、社説記事なども含め否定的な見解を述べる記事が多い。この報道姿勢には疑問を感じることもままある。24日付では「東京五輪コロナ下の開幕 感染拡大傾向 乏しい祝祭感」の見出しが一面に。二面・三面などには、「東京 歓声なき祭典」「花火・ゲーム音楽‥‥場外から"五輪中止を"」の見出し記事。「光を探して幕は上がる」の見出し記事も。
東京五輪の開会式でのある場面を巡って、中国や台湾では物議を醸す出来事があった。台湾(チャイニーズ・タイペイ)選手団の入場の際、場内にこれまでのオリンピックで通常使用されていた「チャイニーズ・タイペイ」のアナウンスが鳴り響いた。だがその直後、NHKの報道アナウンサーを担当していた和久田麻由子アナが突然、「台湾です!」とはっきりした口調で言い放ったことに驚きの声が上がった。この瞬間、台湾の人々の多くが歓喜をしたと伝えられる。台湾メディアも「台湾に誇りの瞬間をもたらした」と報道。
中国の政府系新聞「環球時報」は「公共放送として"一つの中国"を損なう報道はするべきではない」と批判した。週刊ポストの最新号では、「和久田麻由子になぜこんなにも惹かれるのだろう」との見出し記事が掲載されていた。この間の東京五輪のNHK報道のメインアナウンサーとして、開会式でも非常に落ち着きの中にも明るいトーンの彼女のメイン司会ぶりは評価が高い。
また、アメリカの放送局が東京五輪開会式を生報道した際に、中国の地図に台湾がなかったことに、中国政府は厳重抗議をしている。香港では、香港のフェンシング選手の決勝戦を、大型商業施設でのパブリックビューで多くの人々が応援観戦。香港選手の優勝が決まり、表彰式で中国国歌が流された際に、人々の間でブーイングが巻き起こり、「WE ARE HONGKONG(私たちは香港だ!)」の歓声が一斉に起こった。この出来事の中、昨年6月に施行された「国歌条例(中国国歌を侮辱することを禁じる法律)」に基づく初めての逮捕者が出た。
週刊文春と週刊新潮の最新号、週刊新潮では「台本11冊入手 開会式"崩壊"全内幕—計1199ページに全ての変遷が」のトップ記事が掲載されていた。この1年間にわたる開会式の演出チームの変遷をかなり詳細に述べるこの記事を読んでみたが、もし仮に、演出チームのリーダーの交代がなかったとしても、それほど開会式の内容はスケール的にもテーマ性においても大きく変わらなかっただろうというのが私の感想だった。MIKIKO氏にしても、「日本の国とはどんな国なのか」「日本民族とはどんな民族なのか」「日本文化とはどんな文化なのか、日本文化の基底は何なのか」があまり分かっていないとも思った。
この開会式について、ビート武(北野武)は、翌日のテレビ報道番組で 開会式を一刀両断して「金返せよ‥外国に恥ずかしくていけないよ」と発言していた。北野武は国際的にも俳優・映画監督として多少は有名人。この発言は、中国でも韓国でも、東京五輪開会式の評価の低さを物語るものとしての格好の発言として報道もされていた。開会式の内容の問題はあるにしても、北野武もまた、国際社会の中での日本の立場を考えることのできない人だと思う。私は彼について、その論舌など評価すべきところも多々ある人だと思うが、残念ながら、ある種の知的レベルの低さを合わせもった人物だとも思う。(※北野武は開会式の演出チームに関わることを希望していたとも伝わる。結局、チームに参加できなかったが、それがあってか?その後、東京五輪開催に否定的な意見を公にしていた。)
7月27日付朝日新聞の文化蘭に、「開会式 日本をどう映したか」という見出し記事が掲載されていた。思考家・佐々木敦さんの「散漫で安直な"多様性"」と題された開会式についての文章は秀逸だった。また、物語評論家・さやわかこさんの「ゲーム・マンガ工夫なく」もまた、この開会式の問題点について的確な指摘をしていた。
週刊文春の最新号ではまた、「西浦教授が緊急提言—このままではパラ中止も―夏コロナの核心」というテーマの記事を掲載していた。この記事は、パラリンピック開催前に、東京の新規感染者は5000人を超える可能性を指摘し、中等症の患者が急増しつつあり、第四波の大阪のような医療崩壊が起きる可能性が高いことを指摘したものだ。東京パラリンピックは、東京オリンピック閉会2週間後の8月24日に開幕、20余競技を9月5日まで開催予定だ。7月28日付朝日新聞、「東京の感染最多2848人 大阪も急増741人に」の見出し記事。
日本共産党の機関紙「赤旗」7月26日付日曜版、「感染が急拡大 五輪は中止を」の一面の見出し記事。日本共産党はこの1年間、一貫してこの夏の東京五輪・パラリンピックの開催に反対をしてきている。しかし、東京五輪がすでに開幕しているこの時に、「中止を」訴えているのには、ちょっとその異常さにがっかりさせられる。これが日本という国の政治に責任のもてる政党なのだろうかという疑問だ。
私は日本共産党の政策にはかなりの支持できるものも多いが、五輪開催の是非問題や、現在の国際情勢下でのこの政党の対外政策などに関してはその政策立案人材のなさに悲しさを感じたりもしてきた。政策立案スタッフの決定的な欠如を感じる。また、「民主集中制」の党是のもと、党内の意見がほぼ一本化し、異論を言いにくい党の長年の体質は、この党の最大の問題点だと思う。
各種競技が、すでに、予選、準決勝などと進んでいる途中でそんなに簡単に「中止」ができるものでもない。そんなことほしたら世界で赤っ恥をかくこととなる。それこそ日本人は「恥ずかしくて外国に行けない」こととなる。立憲民主党も基本的に開催に反対をしていたが、開会後はどんな見解なのだろうか?
7月29日、茨城県の大井川知事は、全国で初めて9千人を突破する新型コロナウイルス急拡大の事態を受け東京五輪の中止論が出ていることについて、「感染拡大と五輪開催に直接的な因果関係があるかどうか検証されず、ただ感染者が増えたから中止せよというのは暴論ではないか。あまり安易に中止を言うのは無責任ではないか。五輪開催よりも、緊急事態宣言などの長期的な発動からの自粛疲れによる人流の抑制が効いていないことや、デルタ株の蔓延、ワクチン接種のスピードの鈍化が、感染急拡大の要因ではないか」との見方を示した。
また、大井川知事は、五輪の開催が間接的に人流に影響を及ぼしている可能性について問われると、「私は逆だと思う。五輪開催と人流との因果関係が証明されない限り、感染拡大を五輪のせいにすることは少し乱暴ではないかと思っている。自宅で五輪の観戦をする人が増えているとしたら、五輪は逆に人流の抑制に貢献している可能性もある」と指摘した。私もこの意見に賛同する。
7月29日、ついに日本の1日の新規感染者数が1万人超となった。この日の東京は3865人となり3日連続で過去最高を更新した。7月30日、新規感染数は1万743人(東京3300人、大阪882人、千葉753人、神奈川1418人、埼玉853人など)に。京都も167人となった。そして再び、8月2日~8月31日までの期間、東京・埼玉・神奈川・千葉・大阪・沖縄に緊急事態宣言が延長又は新たに出されることが決まった。京都・兵庫・石川は再び又は新たな蔓延防止措置法。
関西の京都市や大阪府全域、神戸市など兵庫県の15市町はこの期間、酒類提供の全面的禁止が発表された。これは今までの宣言や措置法の中で一番厳しい初めての禁酒令となる。8月3日に1年以上ぶりに友人たちと3人で一杯飲みを京都市内で予定していた。それを楽しみにもしていたのだが‥。
日本の感染者数が1万人に迫る中の29日、韓国メディアは「薄氷を踏むオリンピック」と報道していた。日本の東京の真夏日の灼熱的な暑さにこの薄氷も割れそうな中、東京オリンピックは後半に入り、残すところ8日間となった。
世界の眼は日本での感染拡大状況について、「(無観客などで)前例のないほど衛生的な五輪開催が開かれている。選手らは厳しい規制下、東京五輪開催によることが原因の感染者の急増はおこっていない。選手や大会関係者と外部は遮断されてもいる。しかし、緊急事態宣言はほとんど無視され、昼は都心で人出が多く、夜は騒がしい地域もある。五輪まで東京都民や日本国民は何万人もの外国人が来て感染拡大をもたらす可能性を非常に心配していたが、開催が始まり、五輪とは関係のないところで、感染爆発が起きているのが現実だ。(米紙・ワシントンポスト)」と報じている。