彦四郎の中国生活

中国滞在記

日本大学という大学❷―理事長(殿)田中英寿、常任理事・人事部長(首席家老)内田正人

2018-06-05 17:20:28 | 滞在記

 

 日大問題に関して、渦中の2人の名前にどうしても目が行ってしまう。サッカー日本代表として3回のWカップ大会に出場し活躍した「中田英寿(なかたひでとし)」とよく似た名前の「田中英寿理事長」。常任理事、人事部長などの職にある「内田正人」。「正人」とは「正しい人」という意味なのだが‥‥。この二人、ちょっと極端かもしれないが、江戸時代でいえば、約770ある藩(実際の江戸時代は約350藩)の中でも、100万石の大藩である「日大藩」の殿と首席家老としての存在であり、多くの家臣(藩士)たちはこの二人に逆らったり、諫言することは難しいという藩体制だ。そして、7万人を超える藩の領民たち。(領民としての学生たちは、毎年毎年入れ替わり、年貢としての学費を払い続ける。)―20以上あるといわれる付属高校などを含めると、もっと大きな藩となる。(※前号のブログでは10の付属高校としましたが間違いでした。「20以上」に訂正します。)

 日大問題の本質が問われ始めたこの問題。「アメフト部」が起こした対外試合での不祥事に関する記者会見には、監督の内田・コーチの井上両名が会見に臨んだ。当初は、田中理事長が記者会見に臨む予定だったようだが、直前でドタキャンしたようだ。この記者会見で司会をしたのが、「高圧的に逆切れした老人」と言われた米倉広報担当。彼の年給料は1440万以上、月に少なくても120万円〜130万円の給料となるようだが、かなりの高額だ。ましてや高い地位にいる田中氏や内田氏や学長の大塚吉兵衛などは、いったいいくらを月々受け取っているのだろうか。世間では信じられない額かもしれない。学長の大塚氏の弁明などを聞くと、教育者としては大いに疑問のつく人だという印象も受ける。

  (※立命館大学などは、私が学生時代のころは、学費がとても安い大学として有名だった。その後、拡張路線に走り始め、学費がドンドン上がっていった。3年前に、学長選挙が行われ、学長に吉田氏が新たに就任した。理事長と並ぶくらい学長の権限が強い大学ということもあるのか、1年ほど前から大学院の学費が年間30万円ほど安くなった。学部の方も安くなっているのかもしれない。)

 日大理事会の構成員は①理事長(田中)、②常任理事(内田など5人)、③理事(大塚学長など28人)の34人。田中理事長に次ぐNO2の内田氏の権限も絶大だ。彼は、人事部長、常務委員、日大保健体育審議会事務局長(体育会系運動クラブの予算配分を執行権限)、(株)日本大学事業部取締役の職にもあり、彼ににらまれたら、日大教員や職員は離職も余儀なくされる可能性も大きい。常任理事と監督は、世論の動きも感じてやむなく辞任を表明した。しかし、他の職(地位)に関しては半年間の自宅待機になっていて復職がうわさされる。そして、田中理事長は、記者会見など公的な場所にはいまだ姿をみせないままだ。(※「加計学園」の獣医学部(岡山理科大学)問題では、いまだ、加計理事長が国会での国会召集などされていないのも問題だ。)

 各種のテレビでの報道では、「大学に多大な迷惑をかけた責任をとって常務理事を辞任したい」「反省しているなら全役職を辞表と書くべきだ。内田氏に(経営内部のことや理事長の刑事事件となるようなことを)色々しゃべられたら田中理事長は困るので、(いくつかの重要役職をそのままの地位として)、裏切られないように半年間の自宅待機として手元に置いておきたいのでは」「ほとぼりがさめたら、2年後の定期異動で"報復人事"の恐れも」などの報道テレップ。

 これらの一連の事件騒動の中で、国民の「日大問題」の関心がより高まり、「第三者委員会」をようやく設立せざるを得なくなった。また、緊急理事会が開かれたようだが、その席で田中理事長の発言は、「ご心配をかけて申し訳ない」と、たった一言だけだったと伝えられる。「逃げるが勝ち」と、時のすぎるのを待つ戦略のようだ。まあ、政治の世界でもそうだが、教育の場において、このような経営者が存在するというのは、日大の田中理事長や内田氏や理事たちだけではないが、反吐(へど)が出る。

 この男、田中英寿とはどんな男なのか‥‥。日本のスポーツ界の一角を牛耳る「闇のフィクサー」でもあり、暴力団・山口組などとの関係もあるとされる男である。「日大・田中王朝」に君臨している男だ。日大問題は、学問の府である大学で、今起きていることだ。世間とは、人間社会とは、「悪」がはびこりやすい世界だと、つくづく考えさせられる。これに対抗できるものとは何なのか。健全な評価精神と批判精神を併せ持つ人間教育(学校教育で、社会教育で、家庭教育で)は、その重要な部分かとやはり思う。つまり、いつも社会や人間というもののあり方を学ぼうという姿勢をもつ人を育むことであるかと感じたりもする。

◆お笑いコンビ、爆笑問題の太田光が5月27日のTBS系「サンデー・ジャポン」(司会者)で日大アメフト部の宮川選手が関学大の選手に超悪質な行為を行った問題について言及した。その発言内容とは次のようなものだったが、私はこれを聞いていて、なにか‥‥、大田光の発言は いい大人として何かが間違っているなあと感じた。

 大田光は「会見で反則・悪質行為を認めた宮川君はすごく立派だと思うし、自分がやってしまったことに贖罪意識があった」と評価し、一方、「『つぶしに行け』と言われて、いろいろなプレッシャーのもとにああいうプレーをした。監督の言い分も聞いてやらないと」と監督の意見も冷静に聞くべきだと主張した。さらに、「ものすごい特別なプレー。(内田監督が)『ルールの範囲内でけがさせてもいい』と言ったかもしれない。あのプレーを監督が指令したとはどうしても思えない。あれをやればこうなることは分かっているはずだし。」と持論を展開した。しかし、それだけの発言だった。もっと言うべきことがあるだろうと思った。

 5月27日(生放送)の時点で、一連の悪質タックル行為に至った流れは、前日の26日までに各種テレビ番組でも報道がすでにされていて、当初は試合出場メンバーにはリストになかった宮川選手を監督がわざわざ呼んで、「わかっているだろうな。相手をつぶせ、やらなきゃ意味ないよ」と告げて、出場させた流れも前日までには報道されていた。だから、太田光の監督擁護とも感じられた発言にはかなり疑問が残った。

 番組の司会者としては、このテーマを取り上げるなら、まず、司会者として勉強不足すぎる(学びの努力していない)かと思った。視聴者をちょっとなめるなとも思った。(一応、私は爆笑問題・大田光のファンだったのだが‥‥ちょっと残念だ。上記の発言をするのは、それはそれとして、かまわないが、もっと日大問題の本質を真摯に学んで、司会者として発言やコメントをしてほしい。この馬鹿もんが!。番組ゲストに毎回参加している15才〜22才くらいの若いジャリタレに合わせて、最近の太田光は知性レベルを落としすぎだなと感じている。)

 

 

 

 

 

 


日本大学という大学❶―どのような大学なのか‥「大学の自治・民主」の対極にある「大学」

2018-06-05 14:16:59 | 滞在記

 日本大学は、日本最大のマンモス私立大学である。毎年、朝日新聞出版社が刊行している2019年版『770大学、大学ランキング』によれば、学生数約7万人(1位)、教員数(3位)、校地(キャンパス)面積(2位)[東京都・千葉県・神奈川県・埼玉県・静岡県・福島県の18箇所]、校舎面積(1位)、学部数(2位)[医学部・薬学部・歯学部もある]、キャンパス数(2位)となっている。付属校も全国に10高校もある。

 『大学ランキング』では、公務員就職者数でも高い。例えば、都道府県職員1位、中学校教員3位、高校教員1位、自衛官1位、消防官4位、警察官1位(※国士館2位・東海大3位・帝京大4位・近畿大5位)となっている。とりわけ、警察官は2006年から日大がトップを続けている。中高教育界においてもランキング1位、学生数がとても多いのでこうなるとはいえ、その卒業生は日本社会に与える影響は少なくないという大学だ。

 世界の大学評価において最も権威のある「THE」(イギリスにある教育調査機関)の、日本の大学版(2018版)での評価は、けっして高くはない。(1位:東大・京大、3位:東北大、4位:東京工業大学、5位:九州大学、‥‥、10位:慶応義塾大学、11位:早稲田大学、12位:国際教養大学、13位:広島大学、‥‥15位:上智大学、‥23位:立命館大学、‥28位:同志社大学、‥30位:東京理科大学‥‥‥)、そして、日本大学は67位。法政大学などよりも評価はやや低い。日本の私立大学中の評価順位でいえば18位〜20位の大学だ。

 この日本大学のアメフトチームが関西学院大学との対外試合において「起こした出来事」に端を発し、その後を巡って、今、日本社会ではこの大学の大学経営体質に対して、「これが大学という教育という名の場での実態なのかと、驚愕をもって」受け止められてもいる。

 日本大学(日大)は、1960年代末に起きた「大学・学生運動」でも、ある種 特殊な大学でもあった。当時の日大は学生数10万人を誇っていたが、多くの大学で学生運動が盛んになっていた時期でも、なかなか学生運動が学内では起きにくい大学だった。しかし、ついに「大学経営の不正」「ワンマン経営」を巡って、日大でも他大学から一周・二周遅れで、大学紛争が起きた。日大全共闘が結成された。秋田明大が日大全共闘の議長となり、「日大理事会の不正・問題」対する改革を求める動きが全学的に少し広がった。あれから、45年後の今、再びこの大学の経営体質が世間に問われている。

 長い歴史をもつ日本大学だが、学生数を超がつくくらい多く入学させ、多くのキャンパスや学部を作り、拡張路線をひた走ってきた。大学経営に潜む「建学の精神」の消滅、大学全体の「研究」や「学問性」の劣化、「金儲け主義」による支配体制の継続がずっと続いていた大学なのかもしれない。(※こんな中で、日大の「芸術学部」だけは、さまざまな才能を開花させた学生が巣立って行ったとも言われている。今回の問題では、この「芸術学部」だけが、理事会に対する抗議声明をだしている。)

◆日本の大学では、「学長」よりも「理事長」の方が、権力をもっている。中国の大学では、「学長」よりも「大学書記(中国共産党)」の方がとても大きな権力をもっている。

◆今回の「日大の事件」の本質は、「大学の自治・民主」に関する問題である。例えば、立命館大学などは、学長選挙が全学的に行われ、そこには教職員だけでなく、学生も参加する。このため、大学の「民主化」のレベルは高い。これがこの大学の伝統でもある。だから、学生達も一定、「大学の自治・民主」ということに関しては多少の意識もある。京都大学などはさらに高いレベルを大学全体で保っている大学だ。

 一方、日大はその対極にある大学なのかもしれない。今回の問題に対して、「日大教職員組合」は「理事長などの辞任」を求めて書簡を公表している。また、アメフト部の部員や父母会からの「声明」なども発表されている。しかし、日大にあるはずの「学生自治会連合会」からは、何の動きもないようで、報道はまったくない。「大学の自治・民主」ということに関して、かなり学生の意識が低い大学なのかもしれない。これが、日本の「都道府県職員、中学・高校教員、自衛官、警察官」などとして現在勤務していると思うと、日本の未来を或る意味、憂慮する。