彦四郎の中国生活

中国滞在記

米朝会談[南北合同の韓流ドラマ]―中国は、「ほぼシナリオ以上」の出来栄えに満足か

2018-06-16 14:03:36 | 滞在記

 アメリカ・トランプ大統領がカナダで行われていた「G7サミット」をぶち壊し、カナダのトルドー首相やドイツのメルケル首相を激怒させたこともなんら気にせず、せせら笑って即座にシンガポールに向かった。この大統領は「Meke America Great Again」(アメリカを再び偉大に)と言いながら、アメリカや民主主義諸国の力を衰えさせ、世界の民主主義諸国から嫌われる「単なるわがまま、自己陶酔・自己ヒーロー、知性なき利己主義者」にすぎない。さらに、「人権」という感覚を持ち合わせていない(金のためなら何でもする)人物だから さらに「質(たち)が悪い」。こんな大統領に投票したアメリカ人は、自分が投票したことの「恥」を知ってほしい。

 「北朝鮮の体制は保証する」「非核化は時間をかけてよい」「北朝鮮への経済支援の金は日韓にやらせる」「金正恩はすばらしい指導者だ。俺といい友達になれるだろう。」「人権の問題なんてどこの国にもあることだから、北朝鮮の人権の問題のことは ことさらとりあげることでははない」「米韓軍事演習は今後中止することを考えている。在韓の米軍は今後撤退を検討する」「金委員長は良い資質を持っている。面白くて非常に賢く、優れた交渉家だ。金委員長は住民たちを愛している」などを、米朝会談後トランプ大統領は記者会見などで表明した。まさに、「トランプと金正恩という二人の『トラ金、最凶ダック』が誕生したの瞬間だった。特にトランプ大統領には「ノーベル人権破壊賞」というものを新設して贈呈すべき歴史的瞬間だった。

 北朝鮮の「金王朝」支配下のもと、その人権問題が最悪の状況下にあることは明白だ。米国務省によると、「現在、政治収容所に8〜12万人を収容し、拷問したり食べ物を与えず餓えさせたりしている」と。「処刑でミンチにした」といわれる金永哲人民武力部長の処刑は、高射銃(14.5mm口径の重機関銃を一つにまとめた「ZPU4」)を使用し、人体の跡をとどめぬミンチ肉にしたとも言われている。この地球上最悪の暴君に対するトランプの賛辞に耳を塞ぎたくなる人も多いだろう。

 今回の米韓首脳会談では、2機の飛行機を金正恩に貸した中国。中国の報道を見聞きすると、「おおむね満足している」「とてもよい結果だ」と満悦顔で報道している。このドラマは「韓国(文)と北朝鮮(金)」の文金ペアが脚本を書き、中国が監督し、主演は金・助演は文、そして準主演はトランプ。脇役としての通行人安倍。そして影の主役としての習。シナリオ以上のできばえに満足しているという様子だ。中国がこのドラマで描きたかったのは、アメリカのアジアからの撤退である。まずは、韓国からの米軍の撤退である。これが今回のドラマで実現の運びとなる道筋がみえてきたからだ。ほくほく顔だろう。これが実現したら、次は沖縄の米軍基地の撤去に的をもってくるだろう……。まさに、アメリカの敵失の連続にほくそ笑んで笑いが止まらないでいるのが習政権だ。

 この「米朝首脳会談」に関して、維新の党の創始者「橋下徹」は、「米朝首脳会談を評論する愚」というテーマで、公式メールマガジン<橋下徹の「問題解決の指導」>VOL.107、6月12日配信 で次のように発信していた。あきれる内容だった。

 ―準備不足批判するより、世界を動かす大号令を評価すべき―

 ………トランプのおっちゃんは、ここがチャンスと見たんだろうね。米朝首脳会談を即決した。こんなことは政治家にしかできないし、政治家と言ってもトランプのおっちゃんにしかできないことだろう。世界的に、そして特にインテリから人気のあるオバマ前大統領は、「戦略的忍耐」という小難しい言葉を使って北朝鮮外交の方針としていたけど、これって結局「何もしない」ということ。だから事態は何も動かなかった。米朝首脳会談を決める、事態を動かすというところまでは完全に政治家、国のトップの役割で、トランプのおっちゃんは、見事それをやってのけた。

 今回の米朝首脳会談には中身がない、具体性がないと批判している人たちは、事態を大きく動かすことにチャレンジしたことがない人たちだ。まあ、評論家の類だね。そして巨大組織を動かしたこともないのだろう。

◆このようにトランプ大統領を絶賛している橋下徹。今回の「米中会談の内容に関しての批判」を評論家の類と一蹴する彼の論法。この橋下徹という男の本質が満載の内容だった。このような男が創設した「維新の会」に投票している大阪の人々も、「支持投票することの恥を知ってほしい」と私などは思う。かってあった日本の首相候補などもっての他だ。

◆「金正恩主演、文在寅脚本のロマンス」と題して、拓殖大学教授の「呉善花」氏(女性)は次のように語っている。6月13日インターネット配信「Voice」

 親北派の文在寅政権の誕生から状況が大きく変わりました。経済的には優位な韓国がいつの間にか北朝鮮に従うかのような構図になってしまい、いまや南が北に呑み込まれしまう可能性すらあります。韓国の国内世論を見ると、4月27日の南北首脳会談直後、世論調査における文大統領の支持率は80%を超えました。

 とくに驚くべきなのは南北会談以降、韓国で金正恩の人気が急激に高まっていることです。韓国の公共放送MBCが4月29日~30日に行った調査によれば、金正恩を「とても信頼する(17.1%)」と「おおむね信頼する(60.5%)」の回答を合わせると約8割に達しました。民主主義国家の世論が、北の「どくさい者」を認めている。信じられない結果ですよ。韓国国内では、「金正恩は外交上手で国際性がある」など、彼を礼賛する声が聞かれます。金正恩を悪魔のように捉えていた数か月前の世論とは打って変わって、北朝鮮の悪口すら言えない空気に変わりつつあります。………。韓国人は、いまのところは民族的な興奮に浮かれているのだと思いますね。民族が力を合わせていく時代がやってきたと。

◆6月14日にロシアで開催されたサッカーWカップ。今回の「米朝首脳会談」は1対9で北朝鮮の圧倒的勝利とも言われている。中国としてみれば、これもまた1対9で中国の圧倒的勝利だろう。トランプは気まぐれで予測が難しいプレーで1得点はしたが、オウンゴールで9点を献上した「アメリカ史上超最悪のFW兼DFサッカー選手」となりそうだ。そのサポーターでファンの一人が橋下徹。トランプのプレースタイルが大好きなのだろう。

◆最近、韓国のサッカー協会の幹部が「2026年、サッカーWカップの開催地として<中国・朝鮮コリア(南北合同)・日本>の共同開催に言及した。今後これはありえない話ではない。これはこれで面白い発想だと思う一面はあるが…。それまでに北朝鮮の超人権問題は改善されているのだろうか?残念ながらまず今の状況ではありえない。決勝戦はどこで行われるのだろう? この幹部の発想では「北朝鮮の平壌」を念頭にしている節もある。この大会には、中国としても北朝鮮としも韓国としても、「オウンゴールを量産してくれるトランプ選手」にぜひ米大統領兼アメリカ代表選手として出場してほしいところだろう。アメリカが大負けをして、「トランプではだめだと早く目をさましてほしい」。このままでは世界の不幸だ。

◆6月13日の日本の報道番組。米朝首脳会談の中で、トランプ大統領は金委員長に、「日本の安倍が拉致問題をとりあげて欲しいと再三言ってきているから、一度安倍とも会ってみないかね」と語りかけ、「まあ、会うことは会ってももいいが……」と金が応えたと伝えていた。これに安倍首相は狂喜したようで、日朝会談実現による拉致問題の進展に躍起になってきた。そして、15日には、北朝鮮は「拉致問題は解決すみの問題だ。こんな話を蒸し返すのは結婚式で葬式の話をするように不愉快なものだ」と表明していた。

 まあ、カナダやドイツやフランスの首相や大統領が、トランプのG7での態度。対応に対して批判する中、何も言わずに局面を見ているだけの安倍首相にも「首相としてはこりゃもうだめだな」という感じも受ける。最近この安倍首相との党首討論に臨んだ野党党首には「外交問題の外の字もなかった」。実に情けないに輪をかけていた。日本共産党の志位委員長、立憲民主党の枝野代表など、なぜ彼らが国会議員や党首をやっているのか、理解ができなくなってしまった。この2つの党などは、残念ながら「外交に関する党としての見解・方針」はほとんどないに等しいようだ。

 1年ほど前に、長年にわたり日本共産党を支持して党活動もしている知人数人と話したが、「中国共産党を覇権主義国家と今度の党大会で表記しました」と話していた。そんなこともう5年前から分かり切っていたことだろうが……。一般国民もそんなこと5年前から分かっているよ。なにをいまさら…。それで、そのあとどうなん、どういう外交方針なん? と質問したが……。何の話も出てこなかった。情けないが党決定の内容をひたすら理解するだけの現状なんだろうな。自分たちの頭で考え合い自由に意見を出して方針を出していくという党風は、「民主集中制」という党規約のもと、長年にわたりなくなっている。この党、日本共産党内の外交問題に関する方針のなさやレベルのあまりの低さに呆れかえってしまった。残念な党内状況で外交のほんとうに素人以下の党決定に凍結されただけの集団の集まりとなっている現状を憂う。

◆中国のインターネット記事にも、「紀州のドンファン事件」が掲載されていた。

 

 

 

 

 

 

 


中国を巡るいくつかの国々との関係を考える❷—「一帯一路政策の暗雲」とマレーシァ

2018-06-16 06:12:00 | 滞在記

 前号のブログでも紹介した中国の週刊雑誌『VISTA看天下』では、マレーシァの新首相となったマハティール氏(92才)に関する記事もあった。ここ4年間ほど中国の「一帯一路政策」に全面的な支持(中国べったり)を推進していた前首相を4月の総選挙で破った新首相である。「南シナ海」を巡る中国の「誰をはばかることもないような」強引ともいえる姿勢なども相まって、マレーシァ国民に、「今のように傲慢な中国NO!」の民意を表出させた選挙結果となった。

 就任間もないマハティール首相が5月に日本を訪問した。中国のインターネット記事では、「马亚西转向"亲日"?马哈蔕尔给安部带来一个坏消息」との見出し(マレーシアは親日に転向したのか?一つの悪いニュースだ)と報道している。

 現在の南シナ海を巡る状況に関して、周辺諸国(東南アジア・東アジア)の情況は、①中国支持、②中国の政策に反対、③中立、④態度未発表は次のようになっている。[中国のインターネット記事によると]①はカンボジア・ラオス、②はベトナム・マレーシァ・インドネシア・フィリピン・日本・オーストラリア、③は韓国・モンゴル、④はミャンマーなど。(※カンボジアの現政権は、中国の政策に疑問を掲げる「最大野党」(現在・国民の支持が大きい)を非合法にして、事実上 国政選挙を取りやめさせた非民主な国情だ。)

  現在、中国とオーストラリアの関係は悪化したままだ。中国のインターネット記事では、「アメリカや日本と軌を一にして中国の政策を妨害している」と激しくオーストラリア攻撃をすることも多くなっている。

 「这国突然取消中国订单,中国損失重大?中国霸气:太异想天开了!」(この国は突然に中国との契約を取り消した。中国の損失は重大か?中国は道理のないこの国の横暴に怒る。想像外の展開だ!)―2018・6・12日付の中国インターネット記事(マレーシァ批判)もあった。マレーシァの新首相は、中国の一帯一路政策プロジェクトの「中国が主導・契約して、首都クアラルンプールとシンガポールを結ぶ新幹線計画」を凍結すると発表をしたことに対する批判記事だ。

 フィリピンのドゥテルテ大統領は、「中国と戦争を辞さない」と南シナ海を巡って対中強硬発言をこの頃 連発している。南シナ海の領有権をめぐっては、フィリピンの前政権が国際仲裁裁判所に訴えを起こし、2916年7月に中国の領有権主張を退ける画期的な判決を得た。

 だがドゥテルテ大統領は、投資や貿易、インフラの分野での中国との関係強化を優先し、この問題を棚上げにしてきた。しかし、中国の南シナ海支配が強大になる中、「中国に対して何もしな弱腰な大統領」という国内批判が強まってきている。今回の一連の「対中国発言」はこれを鎮静化させるためのパフォーマンスに過ぎないのだろうが、少なくてもフィリピン国内での世論が見て取れる。

◆このように、南シナ海を巡る中国のここ3〜4年間の強引な政策に対して、一帯一路の暗雲とともに、周辺諸国の国民の中に、「中国との付き合い方」に変化を求める動きが出てきている。