長屋茶房・天真庵

「押上」にある築60年の長屋を改装して
「長屋茶房・天真庵」を建築。
一階がカフェ、2階がギャラリー。

伊那谷の仙人が好む「おたぐり」

2015-11-12 08:25:52 | Weblog

先週の火曜日、「英語で蕎麦会」。フランスからやってきたミッシェル(フランス人はみなそう呼ぶ)

という青年とみなで英会話をしながら蕎麦を喰う。その後で旅の人になり、いつものように、

「夜逃げのような里帰り」。今回も蒜山あたりや山口の山陰側の紅葉や秋の幸を堪能しながら

旅をした。6月に続いて、「松の手入れ」の修行のためにこの時期を選んだのだが、ほんとうに日本の秋

はどこの地もいい。山陰のおばちゃんのお店は、10月で閉店してるはずだったけど、行くといつものように

おばちゃんが笑顔で迎えてくれた。「もう一年がんばる」ということ。来年もまたこの「おおいなる寄り道」が

できると思うとうれしくなって、あぶったイカを酒肴にぬるめの燗で3本飲んだ。

家の松の手入れも、以外な時に以外な力を発揮するかみさんが、けっこういい感じに90歳の親父の

一番弟子よろしく仕上がった。家の松も半世紀近く待って、いい相棒ができた、と喜んでいるみたいだった。

帰りは長野経由で昨日の夜に無事東京へ。いつものように正月休みだと、雪で長野経由とはいかない。

毎年春に伊那谷に眠る京都時代の戦友の墓参りにいく。今年は二度目になるけど、美濃あたりから

高速をつかわず、田舎道けもの道を気まぐれにまわって飯田で一泊した。

駅前から一キロくらい「飲み屋街が続く」。ちらっと見ると、どの街にもあるチェーン店の看板ばかりなので、

踵を返して、駅前の赤ちょうちんに入る。灯台もと暗し。伊那谷といえば「おたぐり」だ。

「おたぐりと熱燗ください」というと、若い主人が厨房の母親に向かって「一枚!」という。

熱燗はガラスのコップになみなみと地酒が注がれる。「喜久水」。ガラスの受け皿はないので、

ここでは一段高くなったカウンターの台に鎮座するコップに口をつけるために、イスから立って

一礼するような形になるのが、ならわしであり、みなそうしていた。酒量が限界になると、足もと

がおぼつかなくなり、コップにうまくキスができなくなる。そうなると主人が「そろそろやめとき」

みたいな声をかける。実に素朴だけど、素敵な作法である。

おでんがまた美味い。豆腐とこんにゃくを注文したら、豆腐に「なぎたれ」をのせてくれ、

「これがこの地の食べ方です」とのこと。ねぎをきざみにかつおぶしの味がする醤油とかくし味たぶん

ごま油がすこし入ったものだ。おたぐりで二合、おでんで二合、最後におあげで二合、

ひさしぶりに6合飲んだ。あまりに豆腐とおあげが美味いので、次の日に「大鹿村」

の豆腐屋を目指して車を走らせる。10時ころついたら売り切れだった。

ので宅急便でおくってもらうことにした。

ので今日の「かっぽれ」は、そのあたりがメインディッシュになると思う。6時半から。

おなじく大鹿村の農家さんにわけてもらった「おでん大根」なるもものをさきほど

炭火をおこし、昆布といっしょに土鍋にいれた。今晩の酒はかっぽれの後だけに

すすみすぎるかもなんばん。

熊本の友達が天真庵のHPの「座敷でそば遊び」のところに、先週のアメリカ

からやってきたスーパーシェフとIT業界の人たちの宴の写真をアップしてくれた。

和食とか日本の文化が、ゆっくりただしく伝わっていくと、この星もまだまだ捨てたもんではない、と信じたい。感謝。