昨日はお休みだけど「かっぽれ」。パンツいっちょうになって素肌に浴衣を
羽織る気持ちいい瞬間は、日本人にかえる瞬間でもある。
「かっぽれ」は幇間芸(ほうかん)のひとつ。「たいこもち」ともいわれ、浅草や向島界隈には、全盛期には
300人以上いた、ともいわれる。簡単にいえば、お座敷芸。芸者さんがほかの座敷から帰ってこない時
なんかに「場つなぎ」的にその場を盛り上げる。お客さんは「芸者」が目当てなので、招かざる客の登場は
よしとしないことも多く、「帰れ」と罵倒されたり、酒やビールをかけられたりすることが茶飯事だったらしい。
接客業としては、「卒業証書もの」くらい最終章みたいなもんだと思う。
昨日は女子が初めて見学体験にきた。彼女が二か月前にカウンターでそばを手繰っていた時に、
たまたま、たまちゃんが初めて天真庵ののれんをくぐった。その一期一会の縁で、「かっぽれ」を
やることになった。禅の「卒啄の機」というのは、こんな時に使うんだろうと思う。
6時過ぎにみんなで珈琲を飲みながら談笑していると、たまちゃんが「ちわっ」と店の前を通った。
「たまちゃん」・・・悠玄亭玉・・・85歳 江戸遊芸 女幇間 三味線人生 ・・・
「ひとつごと」を貫いた人生はすばらしい。「三昧王三昧」という禅語もある。
禅僧は座る三昧に徹し、農民は鍬三昧、芸者は三味線三昧、徹頭徹尾やりぬくことに
よってピッカッと光るものになる。
今月18日にはたまちゃんが天真庵で三味線を弾いてくれる。申し訳ないけど今回は2日で満席になった。
来月から「かっぽれ女組」も始まる。そのうちに界隈の古民家の窓やカフェの玄関あたりから、三味線の音が聞こえ、
中でかっぽれをやっているお店などがひしめくような街になるかも。