「ビストロコウタ」は、安くておいしいレストランとして地元民の間で人気の店だ。
が、高い評価を得ている料理に比べ、コース最後のデザートについて誰も感想を語ってくれない。
料理に負けないようなもっとおいしいデザートを。
これが幸太にとって目下の課題だ。
「ブルーチーズのパート・フロマージュでございます」
白く淡い色のソースが皿の上を満たし、その上に丸く焼いた生地ととろりとしたクリームが幾重に積み重なっている。
その見事な造形美をためらいなく突き崩し、口の中に入れる。
冷たさと温かさが入り混じる、温度差のある濃厚な甘みが広がった。
異なる数種類のチーズの香りが鼻先を抜けたかと思うと、ほろほろと崩れるサブレのような生地とナッツの香ばしさが舌に確かな足跡を残した。
甘い衝撃に脳がとろけてしまいそうだった。
もう一度口に含むと、むほほ、と思わず笑いが漏れた。
客として訪れた「テル・カキタ」のオーナー兼パティシエ柿田の言った、単品として食べれば存在感があるのに料理のしめのデザートとしては失敗している、とはこのことだったのだ。
スイーツをめぐり起きた事件は「食の安全」を問いながら複雑に展開していくのだが、作者は神戸フランス料理店など飲食業に従事していただけあって、人間の口に入るものに携わる人たちに苦言を呈している。
食品偽装・安全性の管理・・・儲け主義の世の中で、相変わらず後を絶ちません。
「蜜蜂のデザート」と言うタイトルに魅かれて読んだ作品でしたが、「このミステリーがすごい!」大賞「禁断のパンダ」の続編でした。
うーん、脳にガツンとくるスイーツ食べたいなあ。
「蜜蜂のデザート」 拓未 司
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