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毎日の暮らしの中にある大好きなもの、こと、出合(会)いなどについての気まま日記

墨のゆらめき

2023-09-03 16:52:14 | 読書

本表紙の印象と書家、筆耕士の話ということで、文学調なのだろうかと読み始める。

線路沿いの道を5分

宛名書き依頼のためホテルマンがやっとたどり着いた遠田書道教室。若先と呼ばれる遠田薫は役者のようないい男。が、これがなかなかアクが強いというか個性的。

三浦しをん節ゼンカーイって感じで、書道教室に通う小学生とのやり取りやら、初めて訪れたのに厄介事に巻き込まれるホテルマン続力。「じゃ、チカね」いきなりチカと呼ばれるてしまうこのノリ。

笑いながらも書の奥深さとかに感銘を受けつつ読んでます。

この作品映像化するとしたら。

最近個性的な若手俳優っていないもんなあ。

・・・あ、染谷さんっていいかも。アクが強いイメージを持ってたけど、教場で前半と後半で変化する演技は素晴らしかった。

三浦しをん 「墨のゆらめき」


神様当番

2023-02-12 16:21:44 | 読書

長い下り坂をやってくる7時23分発のバス停には、いつも決まった顔ぶれの5人が集まる。
ある日一番乗りだった私の目にとまったのは、バス停の台の上に「おとしもの」と書かれた付箋の貼られたCDジャケット。

欲しかったけどどこも完売してたやつ・・・
これを、拾った(自分のモノにした) 翌朝、目をさますと

腕に神様当番と大きな文字が書かれていた。

「お当番さん、みーつけた!」
と、突如現れた見知らぬおじいさん。
「わし?わし、神様」

以前読んだ「鎌倉うずまき案内所」の双子を思い出しつつ、笑って、心がぽっとあったかくなってそして最後のお当番さん、零細企業社長。
大人のメルヘン。これは完成度が高いぞ。

「ただいま神様当番」青山美智子

今年も「山の上のランチタイム」「犬小屋アットホーム!」「山のふもとのブレイクタイム」「新!店長がバカすぎて」「古本食堂」と、どの作品も素晴らしくて、活字離れなんてもったいない。
ミステリー好きなのにこんな時代だからか、心があったかくなる物語を選ぶ傾向です。


一橋桐子の犯罪日記

2022-10-30 16:19:12 | 読書

NHKドラマがおもしろくて、今楽しみに観てるのが

「つまらない住宅地のすべての家」
「一橋桐子の犯罪日記」
  「拾われた男」

つまらない住宅地は先に原作を読んでいてのドラマ化で、原田ひ香さんの犯罪日記はタイトルのイメージから読んでなかったけれど、ドラマを追っかける形で読了。
当然ながら原作と違ってますが、これがうまい。
最初ふっくら太って分からなかった桐ちゃんこと松坂慶子さん (好演です) に、境遇としては大変なんだけど、毎回大笑い。

「拾われた男」もどんな展開になっていくのか。

個性豊かな俳優陣、NHKならではかもしれませんが、べったりというかのっぺりというか民放のドラマって同じような顔の人が多いような。

読み終わった、原田ひ香「財布は踊る」もドラマ化になりそう。


ロング・アフタヌーン

2022-09-20 08:14:57 | 読書

今年もいろんな本を読んできたけど、どんな展開になるのか先を読みたいと夢中になった今年一番の作品。

アンソロジー作品で記憶に残ってた葉真中顕「ロング・アフタヌーン」

公募で最後まで残ったものの受賞を逃した「犬を飼う」 ここでいきなりの衝撃。

この作品を推していた編集者の元に7年を経て届いた作品から話は展開していくのだが、緊張感を保ったまま最後までぐいぐい迫ってくる。

各作家によるアンソロジーで記憶に残ってた作家でしたが、とにかく凄かった。

強風が凄かった台風余波が去り、今朝はやっと秋が来たって感じです。厳かに行進するエリザベス女王国葬の中継に大英帝国の底力を観ました。それに比べこの国の情けなさ。

 


夜に星を放つ

2022-07-29 08:50:43 | 読書

いつもはその先を読みたいのに眠気には抗えず寝てしまうのに、昨夜は珍しく夜更しをして残り2編を読み終える。

直木賞受賞作品で初めて読む作家 窪美澄「夜に星を放つ」

短編5作からなる作品だ。

始めの「夜中のアボガド」はライトノベルっていうのか、軽い印象。好みではないかも。

でも、林真理子さんが特に絶賛していた「真珠色スピカ」は、転校した学校でいじめにあってる少女の哀しさの中にある強さが細やかに描かれている。

一人称で語る、私や僕の心の痛みや悩みの中で育つ希望に、ペパーミントのお茶を飲んだあとのような清涼感が残る本だった。1番好きなのは「星の随に」

読んでる間BGMだった、かなりにぎやか、夜更しクマゼミが今朝も早起き大合唱。


山亭ミアキス

2022-02-24 09:42:33 | 読書

悩みを抱えた人が引き寄せられるように迷い込む、森の中に一本だけ続く細い道の先に現れる山亭ミアキス。
そこには美貌のオーナーと、小太りのフロントスタッフ、アイルランド出身の白髪でオッドアイのシェフ、ちゃらいボーイと浮世離れたスタッフがいた

時に語られる猫にまつわる話は興味深く、迷い込むそれぞれの悩みには現代の病巣があぶりだされていて考えさせられる。
群れを成さない「我々」は、独りであり、全員なのだ。
人への呼びかけの声色を持つ唯一の獣である「我々」もまた、人に惹かれ、人を愛していたということを。

あやかしの山亭が現れる猫魔ヶ岳。

調べてみると磐梯山の西に位置し、猫魔火山が生み出したカルデラの外輪山にある一峰。
人食い猫が出没することにこの名前の由来があった。

        

「山亭ミアキス」古内一絵


晴耕雨読

2021-06-16 16:44:16 | 読書

今日みたいに気温低めの雨の日は、コンポで音楽を聴くのに最適で。
小田和正もいいけど、今回選んだのは竹内まりやのdenim。
十数年前、人生の扉が大ヒットしたお気に入りのCD。
雨の音のおかげで、少し大きめにボリュームを上げて聴くことができるから雨の日もいいものです。

本は小路幸也「すべての神様の十月」の最後の章、福の神の幸せ。
おー、幸せを感じることができた無駄にイケメンの死神さんが!
貧乏神に疫病神、道祖神に九十九神のおかま・・・さん・・・
しんみり、あたたか、ほっこりして、笑って十月終わってしまった。
残念。

明日は晴れのち曇り予報なので、お山の菜園へ。
といっても、Yちゃんが植えたトウモロコシ苗は根元をかじられめちゃくちゃ、トマトは途中で折れるというありさまですが。
色づき始めたら結構実をつけていたメスレー三度目の収穫と、もうベテラン?域のメスティンご飯のお昼を食べにいく予定です。

Nちゃんも大絶賛メスレージャムも今年は余裕で作れそう。
最高においしいんだよね


神様たちの遊ぶ庭

2021-05-24 13:33:05 | 読書

表紙のイラストとタイトル「ワンさぶ子の怠惰な冒険」
作者は「羊と鋼の森」(読みましたよ)で本屋大賞受賞した宮下奈都さんなんだ。
と、借りてきて読みだしたら白い柴犬ワンさぶ子が主役ではなかったけれど、宮下さん一家は個性的でおもしろい。
すっかりはまって、北海道の小さな集落の小さな学校に家族で山村留学した一年をつづった「神様たちの遊ぶ庭」を続いて読む。

カムインタラとはアイヌの言葉で「神々の遊ぶ庭」
そう呼ばれるくらい素晴らしい景色に恵まれた土地。
その麓から350メートルほどのところにあるトムラウシという小さな集落の小中併置校は小学生10人、中学生5人。
この中に含まれているのは宮下家の三人の子供たち。

それぞれに個性的だけれど、特にキナコちゃんは秀逸だ。
キナコちゃんがぽつりともらす言葉は、うーん、詩的だなあ。

夢のような景色と、時間と、人々との交流に笑い、時に考えさせられた楽しく豊かな時間でした。
で、ここからさらに山村留学を終えての「緑の庭で寝ころんで」を。
これは、留学中のあのはじけた感じはなく(そりゃそうか) まじめエッセーのようです。


アミ小さな宇宙人

2021-02-02 10:20:21 | 読書

去年の春、日本中が自粛生活してた頃に世界一受けたい授業で確か有田さんが紹介してた
エンリケ・バリオス「アミ 小さな宇宙人」を読み終わる。
若いころから道を求めて世界中を渡り歩き、友人の名もなき小さな印刷所から出版されたこの本はチリでベストセラーになった後、世界11か国語に翻訳されたというから凄い。

頭の上に赤い光がみえ、それが火花を散らして海中に何の音もたてずに落ちた。
そのあたりから浮き上がって誰かが泳いでこっちに来た。
それが10才の少年ペドロと、言葉に表す音がない名前のアミーゴ(ともだち)アミとの出会いだった。

地球はいまだ野蛮な愛の度数の低い惑星で、ある世界の水準が、愛の水準をはるかにうわまってしまったら自滅する。

頭にひとつの脳と、もう一つは胸にあってこれが一番重要で本当のインテリとはこの調和がとれている人。
アミは知性の発達は情緒の発達と調和があって進んでいくべきという。

ETに出会った時のようにワクワクしながら読んでいたのですが、はるか昔地球を脱出した
オフィル星に住む元地球人のように物を所有せず、日々を楽しく暮らすだけの生は・・・
一昔前のヒッピーのコミュニティーのよう?

国境も国もない地球がひとつにまとまった生活は、愛の度数はもってると思うけど未開地球人の私にはなんだかつまらない気がするのですが。


go to

2020-12-05 14:58:35 | 読書

今、コロナウイルスの流行が、僕らの時代最大の公衆衛生上の緊急事態となりつつある。2月29日、こんな書き出しから始まるエッセイ、パオロ・ジョルダーノ「コロナの時代の僕ら」を今読むのは、感覚的にずれがあるのかもしれないと思っていた。
でも、世界を、日本を第三波が襲っている今、ずれているのは相も変わらない日本政府だった。

go to トラベルで出た感染者は少ないとどう言い繕うと、このキャンペーンが始まってから日本中に拡散しているのは誰の目にも明らか。
一か月近く0の状態が続いていた高知でも、15、16と二日連続最多となっています。
こんな中でも政府は批判を受けたアベノマスクにも懲りず、国民の税金を使いトラブルキャンペーンを延長したいんだとか。
よっぽどうまみがあるんだろうね。
世界から不思議がられても、とにかくオリンピック開催、次期選挙資金集め、ですか。

僕たちが属しているのが人類という共同体だけではないことについて、そして自分たちが、ひとつの壊れやすくも見事な生態系における、もっとも侵略的な種であることに。

僕は忘れたくない。今回のパンデミックのそもそもの原因が秘密の軍事実験ではなく、自然と環境に対する人間の危うい接し方、森林破壊、僕らの軽率な消費行動にあることを。

コロナの後、元どうりに戻ってほしくないもの。考えよう。