お知らせ
■来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。
■『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。
■『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。
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■戦争直後に外務省通訳養成所というのがあって、「日米会話講座」という出版物を編纂して出していたことは知っていた。(7,8年前だったか、その講座が揃いで安く売りに出ていたのだが買いそびれてしまった。ただ、今でもバラでなら古書店に出ている。)「外務省通訳養成所編/外務省終戦連絡中央事務局監修」、「担当講師:熊谷政喜/アイナ・メイ・クマガヒ」などとある。サブタイトルからするとどうやらテーマや場面別の会話の本のようだ。気になったのは「外務省通訳養成所」の方だったのだが、ネットでその経緯の一端がわかった。海軍経理学校同期のHPを作っている山田さんという方が書いている「築地本校戦後の軌跡」の中に「外務省通訳養成所(Interpreter Training School 略称ITS)の発足」という項目がある。それによると、「占領軍と支障なく会話のできる警察官を養成する必要に迫られ、外務省と警視庁によって昭和21年8月に急遽設立された」ようだ。担当講師になっている熊谷政喜氏は代々木八幡ペテル教会の牧師で、アイナ・メイさんはその夫人とのことである。
■警察官ということで、はたと気がついたのが原田弘(1994)『MPのジープから見た占領下の東京』(草思社)という本である。「通訳警察官」としての経験を綴ったものなので、何か関係があるのではないかと見てみた。果たして「念願のPITスクールに合格」という項があり、PITというのはポリス・インタープリター・トレーニングスクールの略称で、昭和21年に外務省と警視庁によって急遽設立されたとある。講師の顔ぶれも熊谷夫妻をはじめとして、山田さんの記述と符合する。つまりITSとPITは同じものなのである。(山田さんの記載によると昭和23年からは警視庁単独の運営となり、それにともない改称されたことになる。)原田さんの本には養成所での特訓の様子も詳しく描かれている。戦争直後で食料も十分ではなく、鰯を電熱器で焼いて弁当のおかずにしたため、そのにおいが午後の教室に残って困ったという。受講生の平均年齢は22-3歳で、40人の受講生の中に婦警も3人いた。写真は原田さんの本から。右が原田さんで左がメイ・アイナ夫人。というわけで、長年気になっていた件が解決したのであった。