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[減災]救援物資 個人提供拒否、不用品排除し混乱を避ける

2009-03-31 09:18:29 | 多文化共生
(以下、読売新聞から転載)
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[減災]救援物資 個人提供拒否、不用品排除し混乱を避ける

 大規模災害に遭った被災地に全国から送られてくる救援物資は、その量の多さと、不要な物が多く交じっている点で、過去の被災地ではほとんどが「ありがた迷惑」というのが実情だ。最近では地域防災計画に「一般からの救援物資は不要」と明記する自治体も出てきた。宅配便業者と協定を結び、不要な物資を窓口で制限するシステムも考案されている。救援物資のあり方を考える。
(編集委員 安富信)

 救援物資は被災地外の人たちからの「善意の表現方法」として受け取られてきた。しかし、北海道南西沖地震(1993年)の津波で大きな被害を受けた奥尻島では全国から届いたこの“善意”が現地を大混乱に陥れた。被災直後の企業などからのまとまった数の品物は助かったが、約1週間後から当時の郵政省による無料小包郵便「ゆうパック」が届き始め、島内の倉庫はあっという間に満杯状態。

 ボランティアの手を借りて、仕分け作業を始めたが、衣類の中に腐った食品や、使い古しの下着まで入っていたこともあったという。7月の被災から4か月が過ぎても物資は一向に減らず、年末まで救援物資に振り回されたとする役場職員は「救援物資は時によって二次災害と言われるが、その通りである」と述懐する。

 このように、被災地が次々に届く救援物資により、てんてこ舞いの状態になったことは、1991年の雲仙普賢岳噴火災害でも同じで、95年の阪神・淡路大震災では未曽有の量を体験。2004年の台風23号水害と新潟県中越地震などでも大きな混乱を招いた。

 こうした経験が教訓として生かされ始めたのは最近になってからだ。中越地震の長岡市は06年末、地域防災計画に「災害時に一般からの救援物資を受け取らない」との文言を盛り込んだ。鳥取県西部地震(2000年)の同県も救援物資を受け取らず、義援金による支援を求めることを地域防災計画に明文化した。

 救援物資が被災地の経済復興を阻害することにもなると指摘するのは、永松伸吾・防災科学技術研究所研究員。タオルや布団、衣料、カップラーメン、おにぎり、長靴や薬、雑貨などが送られてくることにより、被災地内の衣料品小売り、飲食店、薬店、靴店などが大きな影響を受けて、販路を回復するのに多大な時間がかかるという。永松研究員はこれを「贈与経済」と呼び、被災地は、出来るだけこの贈与経済の期間を短くすることが早期の経済復興につながる、と説く。

 逆に被災地の経済復興の一助になった例として、中越地震の小千谷市で地元の鮮魚商組合が中心になって実施した「弁当プロジェクト」が挙げられる。地震から2週間後、組合加盟の約20業者が、8000食の弁当を協力して作り始め、市内の避難所に届けた。07年の中越沖地震の柏崎市でも実施された。

 過去の被災地の教訓を伝えようと、「震災がつなぐ全国ネットワーク」(栗田暢之代表)は「救援物資はもういらない!?~新しい善意(マゴコロ)の届け方」というブックレットを作った。「災害時要援護者が人間らしく過ごすために必要なモノ」といった高齢者や障害者、外国人、乳児、妊婦が避難所などで少しでも快適に過ごせるようなアドバイスもある。そして、送る側の人たちへと、受け取る側の行政へ、いくつか提言をしている。

 例えば、送る側には〈1〉救援物資は原則として送らない〈2〉救援物資ではなく必要なモノがある。それはまごころがこもったお金〈3〉平常時から必要なモノは何か考えておく。受ける側には〈1〉個人からの物資は原則として受け取らない〈2〉応援協定を結ぶ自治体や団体、企業からの物資調達を基本にする〈3〉無料「ゆうパック」の申請をしない――などとしている。
宅配便業者と協定 荷さばきのノウハウ活用 北九州市

大規模災害発生を想定した訓練で、救援物資を宅配便業者、ボランティアらと協力して荷さばきする北九州市職員(2月14日、北九州市で)

 北九州市は昨年7月、「災害時における物資輸送等の支援に関する協定」を、市内に支社や支店を置く宅配便業者8社と締結した。同市で数千人に及ぶ避難者が出るような大規模災害が発生した場合に、物資の荷さばきのノウハウを持っている地元の宅配便業者に協力してもらい、流通する救援物資を一元管理し、避難所に配送するシステムの構築を目指す。佐川急便や西濃運輸、ヤマト運輸などの全国展開する業者と地元業者が含まれている。こうした取り組みは画期的だ。

 具体的には、大規模災害発生時に「災害時緊急物資集配センター」を設置し、物資の受け入れ、仕分け、在庫管理、避難所への配送までを一元管理する。運営は市内の関係部局からの組織に民間の宅配便業者を加えた「緊急物資対策チーム」を編成する。特筆されることは、宅配便業者が受託する救援物資のうち市が不要とする品目を業者の段階で制限すること。つまり、要らない物は窓口でカットしようとする試みで、宅配便業者の全国各地の窓口で制限ができ、「要らない救援物資の制限」が実効性を帯びる。

 さらに、配送拠点では荷さばきに必要な重機を借りたり、荷さばき指導者の派遣を受けたり、配送拠点から避難所までの輸送も協定に含まれたりしており、市の負担は大幅に緩和されそうだ。今年2月、業者やボランティアを含めた実地訓練も実施した。訓練を見学した宇田川真之・人と防災未来センター研究員(防災情報)は「救援物資の輸送は行政の平常業務にはないものだから、災害時に適切な設備や機材、専門業者やボランティアなどの協力を得られるよう、備えておくことが大切だ」と評価している。

◇河田恵昭・京都大学防災研究所教授の提言「もちろん、民間から善意で送られてくる救援物資がすべて悪いわけではない。企業などから大量に送られてくる物資には役に立つものが多い。それを峻別(しゅんべつ)し、不必要なものは送らない、そしてモノではなく、出来るだけ現金を贈るように変更することが大事だ」
〈防災ネット〉
訓練施設備えた対策拠点 京都市

 消防学校など消防士らの訓練施設と災害発生時の対策拠点を兼ねた京都市消防活動総合センターが同市南区に完成し、4月から運用が始まる。総事業費は約111億円。

 敷地面積約3万4000平方メートルに、町家や共同住宅の構造を再現した建物14棟を組み合わせた訓練施設を建設。京都特有の細い路地や袋小路などを作って実践的な消火方法を学ぶ「街区訓練場」などがある。

 また、災害発生時には、消防学校を情報収集や関係部署との連絡にあたる作戦情報室に転用。グラウンドはヘリコプターの緊急離着陸場所になり、訓練施設やテントを近隣府県から駆けつけた応援部隊最大2100人の宿泊所にする。
岡山県水難救済会、7市と災害時協定

 瀬戸内海沿岸で海難者の救助や故障船のえい航などを行うボランティア組織「岡山県水難救済会」(事務局・玉野海上保安部)は岡山、倉敷など沿岸7市と災害時応援協定を結んだ。

 同会は漁協やマリーナなど8団体の95人で構成し、計31隻が登録している。協定では、災害などで陸路が寸断された際などに、自治体の要請を受け、小回りの利く船でけが人や救援物資を運ぶ。

 玉野海上保安部は「水難救済会、各自治体、海保が一体となり、海域を活用し災害時の救助活動に取り組みたい」としている。
防災リーダー養成 12講座今秋開講 広島県

 災害時の救助活動や地域の防災指導などの防災リーダーを育てるため、広島県は2009年度から「ひろしま防災リーダー養成講座」を開講する。

 講座は今秋、開講予定で受講料は無料。阪神大震災をきっかけに設立されたNPO法人「日本防災士機構」(東京)が策定する「地域の防災活動」「災害情報の種類」など31講座のうち12講座を実施。受講修了者には、同機構が定める「防災士」の受験資格も与えられる。県消防保安課は「専門知識や技能を持った人たちに活動してもらうことで、地域の防災力を向上させたい」としている。
ネットで防災クイズ 学生2人が卒業制作 高知県香南市

 高知職業能力開発短期大学校(高知県香南市)の学生2人が、地震や火事などの災害時に必要な知識を、インターネット上で学べる「防災クイズ」を開発した。香南市のホームページで公開している。

 情報技術科を今春卒業した大山健太さんと橋田祐貴さんが、磯部真一郎講師の助言で、卒業制作として取り組んだ。大山さんが問題文や絵を作成、橋田さんがプログラミングを担当、香南市消防署が監修した。地震、土砂水害、火事、応急救護の4分野から無作為に10問が出題される。「一般向け」のほか、文字を大きくした「お年寄り向け」もある。橋田さんらは「いざという時のために役立ててほしい」と話している。
(2009年03月29日 読売新聞)

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