瀬崎祐の本棚

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スーハ!  7号  (2011/02)  神奈川

2011-03-06 00:48:00 | 「さ行」で始まる詩誌
 「浮球」佐藤恵。
 私(瀬崎)は電話が嫌いである。長年従事してきている仕事の性格上、電話による連絡ごとは何かしらの急変を告げてくるからだ。それに、電話で聞こえてくる声を聞いていると、この電話の向こうに本当に語っている人が存在しているのだろうかと、不安にもなるのだ。誰が、あなたの名を名乗って語っているのだ? あるいは、何が、あなたのふりをして語っているのだ・・・?
 それはさておき。
 この作品でも、電話がつながっている場所が存在しはじめる。その「彼方に浮いた真空の部屋で/ゆりかごのない子はあそびつづけ」ているし、「水底に沈められた/黒い電話は鳴りつづける」のだ。電話口から声が聞こえてくることによって、誰かが向こうにいることが判る。でも、誰が? どこに? そして電話が鳴ることによって、誰かがその場所へ近づこうとしているのが判る。でも、どうやって?
 
   家を出るたび
   扉はすいつくように閉まって
   無理にひこうとしても誰かに押さえられたままだ
   誰もあけることができない真空の部屋は
   網からほどけた青い硝子の浮球となって
   あかるい海原を漂いつづける

 存在することなど確かめられようもないどこかの誰か。電話の先にいるのは、本当はいるはずもない、そんな人たちだ。そんな人たちが電話の向こうから返事をしてくるので、とても不安になってしまう、そんな作品である。
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