瀬崎祐の本棚

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詩誌「詩ら」 6号 (2023/03) 東京

2023-03-02 19:17:03 | 「さ行」で始まる詩誌
河江伊久の個人誌。A4用紙を二つ折りにした12頁で、ステプラーや紐などによる綴じはなし。この詩誌形態は拙個人誌「風都市」を参考にしたとのこと(面映ゆい)。

今号には河江の詩2編に加えて、ゲストとして歌人の笹原玉子(短歌結社「玲瓏」所属)を迎えている。かつて私(瀬崎)は河江たちと「堕天使」という同人誌を出していたことがあり、その詩誌タイトルは笹原の歌からとったものであった。

「散歩」河江伊久。
あなたははな子を連れて毎日の散歩にやってくる。そしてはな子の檻の前で踊っている。はな子は巨体で、男を踏みつけて死なせたこともあるようだ。象のようにも思えるはな子だが、電車を二度乗り換えて散歩に来ているという。はて。はな子がいったい何であるのかはそれ以上は語られない。最終部分は、

   はな子を見る子どもたちは、あなたの踊りもみる。みつめ
   て動かない。檻の前に立ち止まった人々で垣根ができる。
   人垣はあなたを囲む檻のようでざわざわと音をたてる檻の
   ようで

檻に入ったはな子とその前で踊るあなたは切り離せない関係なのだろう。あなたの踊りも人を殺してしまわないように檻に入れられているのかもしれない。

笹原玉子の短歌はいつも好いなあと思ってしまう。しかし、何が好いのかを説明しようとするとはたと困ってしまう。説明とかの以前の感覚で受けとめている。まったく知らなかった世界へ連れて行ってくれるような、そんな感覚であるとしか言いようがない。「ユモレスク」7首から3首だけ紹介しておく。

   いたづら好きの天使たちです満月にいちどくらゐは出産しても

   たしかに天使は雌雄をもちて中空の別荘(ヴィラ)で入れ替はる離れわざ
 
   放っておいて。これはたんなるユモレスク老シオランの戯れごと痴れごと

彼女から妻宛に送られてくる短歌誌「玲瓏」は私も楽しみに拝読している。
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