瀬崎祐の本棚

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詩誌「指名手配」 8号 (2024/01) 東京

2023-12-15 21:23:49 | 「さ行」で始まる詩誌
佐相憲一が編集発行している詩誌で、今号の同人(この詩誌では”犯人”と称している)は21人。他にゲスト(同じように”共犯者”と称している)が2人。122頁。

「地上に咲く嘘」あおい満月。社会が成立すると人の思惑も錯綜し始める。個人の絶対は他者には嘘であったりもするわけだ。私は社会のなかでどこまでが本当で、どこからが嘘なのだろうかと、思わず問い返したくなるのかもしれない。

   先が見えるようで見えないから
   先という道標に問いかけても
   道標は眠ったふりをしているよう

「車中」井嶋りゅう。私とよく似た横顔の女が運転している車に乗っている。後部座席には男が乗っており、女は私と男がにていると言う。あなたたちこそよく似ていますよと男が言う。ついには、「あなたがそんなふうだから本当は似たくないと思っていると思いますよこのかたはと」女は私を指して言う。はて、似ていると一体どうなってしまうのだろうかと妙な不安にとらわれてしまうようだ。

   私と 僕と あなたはどちらに似たいのですか!とふたりの声が揃う

私はずっと前からこの車に乗り込むことを繰り返していたのだ。降りた記憶はないのに、私はこの車に乗り込みつづけていたのだ。とてもイメージを刺激してくれる作品だった。

「あおちゃんはうちゅうかいじゅう」勝島啓太。連載の第5回となっていて、にゅういんしていたとうさんが いきを ひきとる。いろいろなことがおちついてからも おとうさんが かあさんのゆめにも ぼくのゆめにも でてこない。

   かあさん は
   おとうさん むかしから めんどくさがり だったからね
   しんでまで あたしたちと かおつきあわせたくないのかもね
   といって わらった

うちゅうかいじゅうは人間の約束事から逸脱した存在である。それゆえに、ときに無辜の人たちからも虐められかねないわけだが、そのような位置に主人公を置くことによって見えてくる状況をつかもうとしているのだろう。

若い書き手が集まっている詩誌で、型にはまっていない面白さと楽しみがある。こういう場を設定・運営している佐相の熱量に感心する。
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