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好きなことを好きなだけ楽しみたい欲張り人間の雑記帖

「もし好きにしていいとしたら、キッチンを下取りに出してテイクアウトの店を手に入れる事を選ぶだろう」

2004年11月18日 | パルプ小説を愉しむ
『スコッチに涙を託して』(デニス・レヘイン)のボストンの私立探偵パトリックが、同僚のアンジーについて語る台詞。
パットとアンジーは、地元の大物政治家から盗まれた書類を取り戻す依頼を受ける。簡単な依頼に多額な報酬。やっぱり依頼の内容には嘘があり、盗まれたものは書類ではなく、仲間の政治家の過去を写した脅迫用写真だった。しかも、小児性愛現場を盗撮されたもの。しかも、この写真を探している地元の2つの黒人ギャンググループとも対決するはめになる。冷静沈着、思考明晰、恐れを知らないこと山の如し、といったパトリックとアンジーは、対立するギャンググループの抗争の中、写真を見つけ出す。そこからは悪役政治家やギャングのボスとの知力と胆力を駆使した対決が始まる。
アンジーとはお互いに惹かれ合っているが、アンジーの人でなし亭主のせいで一線が超えられないパット。肝っ玉の太さ、強さと軽口、そして警察や新聞社に助けてくれる友人がいるというこの手のハードボイルド探偵に欠かせない魅力を持つパット。消防士で地元のヒーローだった父親から家庭内暴力を受けていた事がトラウマになっているという設定は、パットに同情を寄せられやすいようにするためと、主人公の複雑な精神構造を説明しやすくするためだろうが、子供の腹部にアイロンを押し当てたなどという話は行きすぎだな。

【その他のお薦め台詞】
・無神論者パットの宗教観 -
「熱帯雨林や海や果てしない宇宙を創った何者かが、同じ手順で人間のような不自然なものを自分の姿に似せて創ったなどということも信じがたかった。」
・これまたパットの文明観 -
「わたしたちは朝な夕な犯されるが、彼らが優しくキスをして寝かしつけてくれるかぎり、わたしたちは目を閉じて眠りにつくのだ。二十世紀が夢見た偽りの偶像に過ぎない、文明や安全のうわべだけの心地よさと引き替えに、心も体も売り渡しながら。」
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