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『名画の言い分』第5章 木村泰司著

2018年06月07日 | 読書雑感
第5章の内容はグッと変わって、天使とキューピッドの違いについての講義です。

キューピッドは古代ギリシャ時代の神々の一人で、性愛の神様エロスの英語名。キューピッドは愛と美の女神ヴィーナスの息子とされていて、広く知られているように愛の標的を射る弓と矢を携えている。元々は少年または青年の姿で現されていたのだが、17世紀のバロックやロココの時代頃から、ぐっと幼い姿になっていった。絵画の主題になるほどの存在ではないが、絵画のテーマが愛であることを分からせるために使われていた。

非常に似通った存在として、弓矢を持たない裸の有翼の子供が描かれていることもあるが、これはプットー(複数形はプッティ)と呼ばれる存在で、さまざまな妖精を擬人化したものらしい。リューベンスの『愛の園』のようにバロック時代には画面が大型化したため、空きスペースを埋めるために重宝されたそうだ。弓と矢がないのがプッティーとはいっても、ヴィーナスと一緒に描かれたものは、たとえ弓と矢を携えていなくてもキューピッドとなる。なぜなら、ヴィーナスの息子だから。お約束事ですよね。

一方、天使とは、本来は肉体を持たず姿や形やサイズが決まってはいないが、地上にいる際には物質化して人間のように見える存在とされている。神様の意志を人間に伝えるためにメッセンジャーが天使たちの役割で、キリスト教だけでなくイスラム教やユダヤ教にも現れる。そして、上級天使、中級天使、下級天使と全部で9等級のランク付けがあって、私でも知っているガブリエルやミカエル、ラファエルは、大天使と呼ばれる下から2番目の下級天使でしかないんだってさ。天使さんの世界も我等サラリーマン同様にヒエラルキーがうるさいんだね。昇格とか降格とかあったのかね。ルシファーという名前の堕天使がいることは知っているが、これもヒエラルキー間の移動なのだろうか?もし、そうなら、サラリーマンとしてルシファーさんに同情申し上げるよ。第1位の天使は、セラフィム(熾天使)と言う名前で純粋な光と思考の存在なんだって。どんなものか、ちっとも想像できないね。面白いのは、悪魔の侵入を阻止するために悪魔の軍勢と対峙する役割の天使が、パワーズ(能天使)として第6位のランキングされている。さっきも書いたように、上級になればなるほど見えない存在になるので、画面上に描く時には、頭部に翼がついた存在であったり、時には6枚の翼だけで描かれることもあるんだって。『ケルビムのいる聖母子』(ケルビムは第2位の天使で智天使)の天使などは、不気味な存在でしかなく、勘弁して欲しいね。

つまり、天使は神の使いであるため、キリスト教と関係がある。聖母子の直ぐそばにいる人物は、天使。普通の人間が聖母子のそばにお近づきになれる訳がないからだね。

このように、翼があるからといって、神話を主題にしている画を見て、「この天使が~~」とは口が裂けても言ってはいけないし、教会に飾られている画の中の有翼の姿をみて「このキューピッドがね~~」などと頓珍漢なことを言ってしまうと、無教養の田舎モン(我々は異教徒ですが...)と失笑を買ってしまうことが分かりました。

絵画を観て教養高いジェントルマンを気取ろうとしている以上、これは大切な知識でありました。

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