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刑事罰で再発防げぬ

2010-10-29 21:37:40 | よくわからないこと
 ニアミス有罪確定へ 「刑事罰で再発防げぬ」 管制官ら疑問の声 朝日新聞 2010.10.29 朝刊

 ヒューマンエラーは裁けるか――。この問題が焦点となった2001年の日航機ニアミス事故。最高裁は便名を言い間違えた管制官に刑事罰を科す判断を下した。トラブルが相次ぐ管制の現場は深刻に受け止める。一方、「処罰は再発防止につながらない」との声も強い。波紋は医療や製品事故の分野にも及ぶ。

 「あまりにもタイミングが悪い」。国土交通省の幹部は28日夕、最高裁決定を受け、肩を落とした。

 北海道で管制官が旅客機に誤った降下指示を出し、山肌に衝突しかねない危険を招いたばかり。今月上旬には福岡航空交通管制部(福岡市)でも職場体験の中学生に航空機と交信させ、「緊張感が足りない」と批判を浴びた。
 幹部は「単に『しっかりやれ』というだけでは済まされない」と焦りを見せる。

 航空会社の関係者も「管制官は安全の源で操縦以上に大事だ。その意識を末端まで持ってほしい」と厳しい。

 だが、管制官が刑事罰を科されることには、省内や現場の管制官から疑問の声が多い。「ミスをしたら裁かれる。ならば隠してしまおう、と考えることにならないか」

 当事者だけが裁かれることも問題視する。

 ニアミス事故でも山岳接近トラブルでも、管制官の「誤指示」に非難が集まる。だが、元全日空機長で航空評論家の前利明さんが「パイロットの協力でミスを補うことができたのでは」と指摘する。

 ニアミス事故では、上昇中の便に急きょ、降下の指示が出た。接近トラブルでは、最低高度の規定よりも低く飛べとの指示だった。「いずれも不自然な指示。『本当にそれでいいのか』と聞き直すことはできたはずだ」

 山岳接近のトラブルでは、管制官のミスを対地接近警報装置が救ったとも言える。日本ヒューマンファクター研究所の桑野偕紀所長は「安全は機会と複数の人間によるシステム全体で保たれるという考え方が大事だ」と指摘する。

 「被害者の感情も考えて」

 「国際的な流れに逆行する最高裁の判断だ」

 医療の現場でヒューマンエラーを研究している自治医科大学の河野龍太郎教授(医療安全学)は、「ちょっとしたミスは不注意で起こるという認識は誤り。人間はミスをおかす。だからミスを前提に安全なシステムを構築する、というのが国際的に主流な考え方で、医療の現場も同じだ」と話す。

 今回の決定が判例となり、うっかりミスをした医師らが刑事処罰を受けることで事態をおさめるという風潮が広がることを心配する。

 事故が起きた時に、刑事罰は面積してでも真実を語らせ、再発防止を目指すべきだとの考え方は、航空や鉄道の分野では以前から議論されてきた。前原誠司・前国交相は8月、原因究明のための調査を捜査より優先させると表明。製品事故などを扱う消費者庁も、個人の刑事責任を追及する警察などの捜査が優先されがちな現状を見直そうと、専門家らの検討組織を立ち上げた。昇降機や食品、製品といった幅広い分野をカバーする新しい調査組織も模索されている。

 だが、大切な家族を失った遺族や、深刻な傷を負わされた被害者の中には「誰かが処罰されなければ浮かばれない」との思いもある。

 首都大学東京の前田雅英教授(刑法)は「免責して再発防止をはかるという議論も理解できるが、被害者や遺族の感情も考える必要もある」と指摘する。今回の決定は、「ほかの過失犯と比べても妥当。管制官には業務上の注意義務があり、それに明らかに違反していれば処罰は当然だ」と話す。
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 日頃から最大限のミス防止の努力をしていたのであれば、刑事罰を課すのは適当ではないと思うが、ずさんな体制による出来事ならば、職種によって刑事罰を免れるというのは理解されにくいのではないか。

 絶対正確な業務をしろ、などというのは愚の骨頂。ミスをしてはならないとすることが、ミスではないと反省しなくなる傾向を生み出し、原因があいまいになり、再発防止につながらない。 


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