<国立がんセンター>麻酔医が相次ぎ退職 手術にも支障 4月3日2時35分配信 毎日新聞
国立がんセンター中央病院(東京都中央区、土屋了介院長、病床数600)で、10人いた常勤麻酔医のうち5人が昨年末から先月までに相次いで退職し、1日の手術件数が2割減る異常事態になった。より待遇の良い病院への転籍などが退職理由で、「がん制圧のための中核機関」を理念に掲げる日本のがん治療の“総本山”に、全国的な医師不足が波及した形だ。
土屋院長によると、退職の主な理由は、待遇の良い民間病院や都立・県立病院への転籍だ。同病院の職員は国家公務員で、30代の中堅医師の場合、給与は年間700~800万円程度。一方、都立や県立病院は1000万円台、民間病院なら1000万円半ばから数千万円になるという。
土屋院長は「中央病院は、医師が勉強する環境は十分整っているが給料は並以下で、施設の努力で確保するには限界がある。医師の絶対数を増やす政策が不可欠だ」と話す。
築地の国立がんセンターといえば銀座の隣で、設備的にも地理的にもたいへん恵まれた環境にある。そんな国立がんセンターでの勤務を捨ててまで転籍する。
麻酔医として忙しさが同じなら給料が高いほうがよいという、そんな単純な理由なのか、少々疑問に思った。給料が違うといっても、年収で200万以上の差だ。けっして少なくない。それにしてもだ。
同じ仕事をするのなら、そりゃ給料の高いほうが、少ないよりいいに決まっている。しかし給料の高さだけで人は職を選ぶのではない。給料さえ良ければ、他の待遇にしてもどうでもいいわけではない。仕事の中身であれば、なおさらだ。
この院長は給料の較差が大きいことをその主因としているが、まるで自身にはさしたる責任がなかったように、責任を給与体系に転嫁しているような言い方に聞こえる。単に年収だけの問題であれば、もっと以前から問題になっていてもよさそうだ。ここにきて集中しているのも不思議なところだ。
実のところ、麻酔医を尊重せず、仕事に魅力を持たせられず、やりがいを与えられない、病院経営の失敗が背景にあり、それならばと給料の較差に飛びつかれてしまったことはないだろうか。給与格差をクローズアップさせてしまったのは、仕事のあり方、進め方に真の原因があったのでないだろうか。
公的病院だから、院長の裁量も限られる部分もあろう。それにしても旧・国立病院と違ってがんセンターは別格の扱いだったはずだ。給料が安かろうとも、立地も環境も恵まれている。ステイタスもネームバリューも十分である。給与較差だけの問題のようには思いにくい。
しかし、いくらなんでも麻酔医の年収が700~800万では安すぎないか。他科の医師はどうなのか。大差があるようにも思えない。であれば、なぜ相次いで退職するのか。そんな待遇で改善が図られなかったのも、麻酔医を単なる作業労働者のような存在に軽く扱うような雰囲気があったのではないだろうか。
国立がんセンターには、一般の病院で手に負えない患者も、藁をもすがる気持ちでやってくる。頼りにされてることは、医療従事者にとって何よりのことだ。それを簡単に見捨ててまで転籍したのだ。
給料は院長だけでは決められないし、院長の努力では決められない。そんなどうしようもないことをコトの原因としている姿は、自身の責任を直視しようとせず、責任転嫁も甚だしい。とても解決の道など見えてこない。そういった姿勢に麻酔医は絶望感を覚え、匙を投げられてしまったのではないだろうか。
国立がんセンター中央病院(東京都中央区、土屋了介院長、病床数600)で、10人いた常勤麻酔医のうち5人が昨年末から先月までに相次いで退職し、1日の手術件数が2割減る異常事態になった。より待遇の良い病院への転籍などが退職理由で、「がん制圧のための中核機関」を理念に掲げる日本のがん治療の“総本山”に、全国的な医師不足が波及した形だ。
土屋院長によると、退職の主な理由は、待遇の良い民間病院や都立・県立病院への転籍だ。同病院の職員は国家公務員で、30代の中堅医師の場合、給与は年間700~800万円程度。一方、都立や県立病院は1000万円台、民間病院なら1000万円半ばから数千万円になるという。
土屋院長は「中央病院は、医師が勉強する環境は十分整っているが給料は並以下で、施設の努力で確保するには限界がある。医師の絶対数を増やす政策が不可欠だ」と話す。
築地の国立がんセンターといえば銀座の隣で、設備的にも地理的にもたいへん恵まれた環境にある。そんな国立がんセンターでの勤務を捨ててまで転籍する。
麻酔医として忙しさが同じなら給料が高いほうがよいという、そんな単純な理由なのか、少々疑問に思った。給料が違うといっても、年収で200万以上の差だ。けっして少なくない。それにしてもだ。
同じ仕事をするのなら、そりゃ給料の高いほうが、少ないよりいいに決まっている。しかし給料の高さだけで人は職を選ぶのではない。給料さえ良ければ、他の待遇にしてもどうでもいいわけではない。仕事の中身であれば、なおさらだ。
この院長は給料の較差が大きいことをその主因としているが、まるで自身にはさしたる責任がなかったように、責任を給与体系に転嫁しているような言い方に聞こえる。単に年収だけの問題であれば、もっと以前から問題になっていてもよさそうだ。ここにきて集中しているのも不思議なところだ。
実のところ、麻酔医を尊重せず、仕事に魅力を持たせられず、やりがいを与えられない、病院経営の失敗が背景にあり、それならばと給料の較差に飛びつかれてしまったことはないだろうか。給与格差をクローズアップさせてしまったのは、仕事のあり方、進め方に真の原因があったのでないだろうか。
公的病院だから、院長の裁量も限られる部分もあろう。それにしても旧・国立病院と違ってがんセンターは別格の扱いだったはずだ。給料が安かろうとも、立地も環境も恵まれている。ステイタスもネームバリューも十分である。給与較差だけの問題のようには思いにくい。
しかし、いくらなんでも麻酔医の年収が700~800万では安すぎないか。他科の医師はどうなのか。大差があるようにも思えない。であれば、なぜ相次いで退職するのか。そんな待遇で改善が図られなかったのも、麻酔医を単なる作業労働者のような存在に軽く扱うような雰囲気があったのではないだろうか。
国立がんセンターには、一般の病院で手に負えない患者も、藁をもすがる気持ちでやってくる。頼りにされてることは、医療従事者にとって何よりのことだ。それを簡単に見捨ててまで転籍したのだ。
給料は院長だけでは決められないし、院長の努力では決められない。そんなどうしようもないことをコトの原因としている姿は、自身の責任を直視しようとせず、責任転嫁も甚だしい。とても解決の道など見えてこない。そういった姿勢に麻酔医は絶望感を覚え、匙を投げられてしまったのではないだろうか。