新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
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ムラサキ:紫(万葉集を彩る)

2007-10-02 06:29:23 | 植物観察1日1題

あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る
紫のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆえに我恋ひめやも
天智天皇の7年(668)5月5日、天皇が近江の蒲生野で遊猟したときの額田王と大海人皇子のこの掛け合いの歌は大胆な愛の歌として現代でも、特に、女性に人気があります。
このすばらしい相聞歌は、実際には2人のひそやかな愛の歌ではなくて、狩猟の後の宴会を盛り上げるため座興だったとされています。酒席の戯事とはいえ、衆人承知の過去の恋愛関係を歌った2人の勇気と機知に満場大喝采だったことでしょう。天智天皇の複雑な表情も目に浮かびます。
乾くと濃紫色になる根を染料に用いたところからのムラサキの名がついています。
万葉の時代、蒲生野一面に生えていたであろうムラサキ:紫(ムラサキ科ムラサキ属)は、栽培されることもありますが、今は野生ではほとんど見られないようです。
山地に生える多年草で、高さ30~60cm、葉は互生し、披針形で葉柄はなく毛があります。夏の初めころ葉脇に葉状の苞がつき、その間に直径4mmほどの白い花をつけます。
写真は時季おくれでしたが、奈良春日大社の万葉植物園で撮ったものです。