Eur-Asia

西洋と東洋の融合をテーマとした美術展「ユーラシア(Eur-Asia)」の開催を夢見る、キュレーター渡辺真也によるブログ。

森村泰昌・なにものかへのレクイエム 東京都写真美術館 3/11~

2010-03-03 01:38:21 | Weblog
アトミックサンシャイン展にてご一緒した、森村泰昌さんの個展「なにものかへのレクイエム - 戦場の頂上の芸術 -」が、3月11日より、写真美術館にて開催されます。森村さんの近年の作品をまとめた、集大成的な展示になると思います。きっと驚く様な発見もあるはず。皆さまお誘い合わせの上、ぜひ足をお運びください。

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森村泰昌・なにものかへのレクイエム
-戦場の頂上の芸術-


■会 期:2010年3月11日(木)→5月9日(日)
■休館日:毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)
■会 場:2・3階展示室
■料 金:一般 1,000(800)円/学生 800(640)円/中高生・65歳以上 600(480)円
※( )は20名以上の団体および東京都写真美術館友の会会員、上記カード会員割引料金
※小学生以下および障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料
※第3水曜日は65歳以上無料

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私達は、戦場の頂上に旗を掲げます
意気揚々たる、勝ち誇る旗ではありません

一枚の薄っぺらな画用紙 平々凡々たるカンバス
私の旗は 白い旗です

見上げれば、宇宙の風 見下ろせば、戦える大勢の人々
宇宙の風と戦いの影がせめぎあう 地球の頂上に立ち
あなたなら どんな形の どんな色の どんな模様の
旗を掲げますか

(新作映像作品《海の幸・戦場の頂上の旗》より)


80年代から一貫して、名画の登場人物や映画女優などに自らが「なる」変身型セルフポートレイトの写真作品を手がけてきた美術家・森村泰昌。本展では、森村が「20世紀の男たち」に扮する新作シリーズ<なにものかへのレクイエム>を完全版でご紹介します。
20世紀は男たちが建設し、争い、破壊してきた歴史であるにもかかわらず、21世紀の現代では急速に「男性的なるもの」の価値が忘れ去られようとしています。森村泰昌はかつて<女優>シリーズで、映画という「フィクション」のなかで輝きを放つ20世紀の女たちの世界を表現しました。<なにものかへのレクイエム>シリーズでは、森村は「男性的なるもの」の輝きを求めて、政治や戦争、革命という「現実」の世界、20世紀を記録したシリアスな報道写真の世界に取組んでいます。<美術史の娘><女優>シリーズと過去に発表した作品のなかで、女性に「変身」するイメージが強かった森村泰昌。「男たち」になることは、自らの身体を 媒介にして性を自由に超越し、「私」の可能性を追求するセルフポートレイトの新たな挑戦でもあります。
『現在私たちは21世紀を生きています。しかしこの21世紀は、かつて人々が想像していたような夢の世紀ではないようです。にもかかわらず、人類はこの 21世紀をまっしぐらに突っ走っているかに思えます。前の世紀である20世紀をブルドーザーで更地にして、20世紀的記憶を忘れ、その上にどんどん21世紀が出来上 がってきつつあるように思います。私はここでいったん歩みを止めて、「これでいいのかしら」と20世紀を振り返りたいと思いました。過去を否定し未来を作るのではなく、現在は過去をどう受け継ぎ、それを未来にどう 受け渡すかという「つながり」として歴史をとらえたい。そしてこの関心事を私は「レクイエム=鎮魂」と呼んでみたいと思いました。』(森村泰昌)
鎮魂歌(レクイエム)。それは、森村泰昌というひとりの美術家が自らの身体という器に歴史の記憶を移し替えるセルフポートレイトの表現によって、過ぎ去った人物や時代、思想への敬意をこめて、失われていく男たちの姿を21世紀に伝えようとする行為なのです。20世紀とはどういう時代だったのか? 歴史の記憶に挑む森村泰昌の新たなセルフポートレイト表現の集大成をお楽しみください。

本展は東京都写真美術館の2フロア(2階・3階)を使い、4章構成で展示いたします。
出品総点数:新作15点を含む全43点(写真作品35点・映像作品8点)