Eur-Asia

西洋と東洋の融合をテーマとした美術展「ユーラシア(Eur-Asia)」の開催を夢見る、キュレーター渡辺真也によるブログ。

ベアテさんとの出会い

2006-11-01 10:09:44 | Weblog
今日は朝から仕事の関係で、アッパーイースト・サイドにあるアジアソサエティーに向かう。

地下鉄の中で、村上春樹の小説を読んでいる若い女性を、2人もみかけた。NYでは日本ほど地下鉄で本を読んでいる人の数は少ないので、なんだか目立った。最近、村上春樹がカフカ賞の関係でメディアに出たり、ノーベル賞候補になったりした影響だろうか。

アジア・ソサエティーでは、長年の念願叶い、ベアテ・シロタ・ゴードンさんにお会いしてきた。

ベアテさんはGHQの統治下の日本で通訳として活躍されていた方で、日本国憲法第24条、すなわち日本における女性の自由を規定しれくれた、とてつもない方である。その後、ベアテさんはジャパン・ソサエティーやアジア・ソサエティーのディレクターを歴任し、NYにアジアの芸術を紹介してきた第一人者である。例えば、オノ・ヨーコさんがNYに来たばかりの時、仕事がなくて困っている際ベアテさんがジャパン・ソサエティーでの仕事の機会を与えたことなど、枚挙に暇が無い。

自著に書かれている通り、ベアテさんが女性の自由を書くきっかけになったのが、ベアテさんの家でお手伝いをしていた美代さんが、常々「日本には女性の自由がない」と繰り返していたことがきっかけだそう。この美代さんは静岡県沼津市の漁師の娘さんで、沼津市の魚屋の息子として生まれた私と、状況がかなり似ている。ベアテさんとは、そんな話をしながら日本語で盛り上がった。

ベアテさんはオーストリア出身ということもあり、ドイツ語でもしばらく会話したのだが、ウィーンにはあまり興味がないらしく、やはりアジアが好きだと言っていたのが印象的だった。今後ドイツに行くときは、ファスビンダーの奥さんを紹介するから会ってきなさい、と言われたのが嬉しかった。

本当に素敵な方だった。こういう方と会えると、自分のやっている事が間違っていない、という自信と力を与えてもらえる気がする。本当に会えてよかった。