穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

三島由紀夫が肉声テープに自己検閲をかけた

2017-01-14 06:57:07 | 三島由紀夫

 前回も指摘したが、このテープが発見された経緯が読売新聞記事にない。いわば欠陥記事であった。その後あちこちで散発的に出て来た報道ではTBSだか毎日新聞が保管していたものらしい(ただし確認不可)。 

また、マスコミ(TBSのことか)が発表を禁止したという。テープには「放映禁止」と書いてあったという(同確認不可)。また、インターネットで見たが、誰かが「だからマスコミは勝手に都合の悪いことを押さえこむ」と言ったような意見があった。?! ?!である。極右の三島の危険思想が流布するのをマスコミが検閲したというのだな。テープのすべてが報道されていないので何処が彼らにとって問題だったのか分からない。読売に出ていた部分にはそんな所はなかった。

これは三島由紀夫の自己検閲の可能性が一番高い。インタビューを公にする前に対談者に事前に原稿を見せて確認するのが普通だろうが、其の時点で三島がやっぱりやめてくれ、と言ったと推測する。

たとえば漢文の素養もないのに、偉そうなことを言った部分等公表されたら冷笑されるのではないか(ミーハーにではなく、しかるべき人たちに)と怖れた。小説は思想じゃなくて言語がマテリアルだなどという発言も彼の実際の作風と相反している。これを発表すると議論を呼びそうだ。まして当時ノーベル賞の候補になったと噂されている自分に不利になる、と考えた。この線が妥当ではないか。つまり三島が自己検閲をかけたのである。

なお、今後テープの全文が公表されるとか、テープ作成時の客観性の高い証言が出て来た場合は上記を訂正することはある。

 

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