穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

重力ピエロ 書誌?

2022-01-22 08:10:39 | 書評

短評 はじめチョロチョロなかパッパ、仕舞いはOK。
書誌? 一月三日読み始め 読了一月二十一日 
読みにくくはないが二週間以上読むのにかかった。470ページ
 途中で読み直し、読み戻しは一度もしていない。長期間中断していても前回読んだところからすぐに入って行ける。こういう小説は珍しい。評価の一基準にはなる。
時間がかかったのは最初の部分で乗って行けなかったからだろう。中盤あたりから滑りがよくなった。これはミステリーなのかな。「兄」のパートからはミステリーでもあり、また犯人の独白(ドスト罪と罰風)でもある。ミステリーとすれば最初のパートで犯人を出しているから探偵小説二十則にはのっとっている。
 読む前に読んでもかまわないが、犯人は「おとうと」、別途(つまり共犯ではない)未遂犯は「あに」という仕掛けだ。工夫だね。寡読のわたしは他に同様の例があるかどうか分からないが。記述に破綻はないようだ。
 最後の「おとうと」が「DNA上の父親」をバットで殴り殺す場面で、どうして「おとうと」が「ちち」を深夜の小学校の校庭に呼び出したかの記述がないのでオヤと思ったが、これも記述者「あに」の視点からはOKなのだろう。「あに」が夏子に導かれてこっそりと「おとうと」をつける下りは記述があるからね。
 最後まで警察のお世話にならないところがいい。ちょっとチャンドラー風だね。
小川榮太郎氏の評価は84点。


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