湖北の山の中で一番目につくのは伊吹山。
滋賀県の最高峰であり、その山容は夏冬問わず美しい姿である。
滋賀県の人なら誰でも知っている、知名度の高い山である。
その人気の山の奥に、白倉岳と吊り尾根を形成する金糞岳があり、彦根からもよく見える。
特に冬になると早くから雪をかぶり、冬の間中白く輝き続ける山である。
世間ではあまり知られていないが県下第2の高峰で、山を知る者にとっては気になる山である。
今回は、カミさんと二人で山スキーでこの金糞岳を目指した。
夏は鳥越林道を利用して、標高1000m付近まで車で上がれるが、冬期はこの林道が閉鎖される。
こうなると、麓から金糞岳ピークまで標高差1067m、距離約10kmのタフな雪山となる。
日帰りでは、かなり厳しい山である。
で、今回は行けるとこまでという思いで、それでも早朝3時に起床して自宅を出発する。
登りは鳥越林道を使わずに、東俣谷川沿いの道を行く。
薄暗い狭い林道を2時間ほど進んで、悪いトラバースを越えたところで行き詰まってしまった。
「??? 何だ、これは ?」
そこには関電のダムがあり、先の道も雪に埋もれてこれ以上前に進めない。
思わぬダムの出現と、途切れた道に頭は混乱する。
どうも暗い単調な林道歩行で時間と距離感を失い、現在地を見誤ったようだ。
分岐の「追分」を通り過ぎてしまい、沢を詰めるルートに入ってしまっていたのだ。
自分のミスを理解し早々に引き返したが、これで一時間以上ののロスをしてしまった。
「追分」まで戻りルートを見つけて、ようやく中津尾に取り付く。
この間にカモシカ2頭と遭遇、奴らの脚力に脱帽する。
尾根ルートから、やがて明るい鳥越林道に出る。
でももうピークには行けない、どんなに急いでも時間ロスを回復できる訳もなく、
意気消沈気味に登高する。
結局700m付近でラーメンとお汁粉で大休止し、ここからはスキーで下降とした。
あとは道迷いの心配のない、だらだら林道滑降。
天気もよかったので、休憩中はお気楽モードだった。
しかし現実は、「そうは問屋が卸してくれなかった」のだった。
鳥越林道は今年の豪雪で荒れ放題、倒木が至る所にありまたデブリもあちこちに出現し、我々の行く手を阻む。
その度にゴキブリのように這いつくばったり、スキーをはずして障害物を越えたりしなければならない。
途中一カ所、完全に林道が崩落したところがあった。
そこには急傾斜のカリカリデブリがあり、通過するのにスキーを引きずりながらキックステップトラバース。
ミスって落ちれば、100m下の川底までノンストップである。
一歩一歩慎重に進みここを越えるが、予想外のデンジャーゾーンの出現に二人して肝を冷やす。
予想外と言えばイノシシ2頭と5mの至近距離で遭遇し、その他イノシシの死骸2体なんかにも出くわした。
単調と思われた林道も、終わってみればなかなかエキサイティングな未知なるルートとなり、
我々はこのアドベンチャーを十分満喫した。
冬山では計画や予定には書けない、予期できない状況が次々に出現する。
それにどう対処していくか判断と行動が求められ、そのリアリティがとても面白いのである。
今回は失敗したが、次回はピークを踏めるよう作戦を変更して、また金糞岳に挑みたい。
帰路、自販機で買ったファンタグレープが体を潤す。
雪山の帰りに、冷たいものをとてもおいしく感じた。
そのことがこれから迎える春の予感を感じさせた、そんな山行でもあった。
記録
山域・目的 金糞岳(滋賀県長浜市浅井町) 山スキー
日程 2006/2/18 日帰り
メンバー カミさんと二人
データ 積雪 50~150センチ、雪質 ザラメ状、
行程 2/18(土) 晴時々曇り (行動行程 9時間)
4:45 自宅発 → 近江高山キャンプ場駐車場
5:45 キャンプ場駐車場 より入山(250m)
・ ヘッドライト付けてカリカリの雪面をシール歩行
8:30 関電ダム
・ 現在地を見誤り、追分を通り過ぎて関電ダムまで行ってしまう
9:00 追分(370m)
・ 追分まで戻り鉄橋を渡り、中津尾に取り付く
・ 倒木多くスキーを引きずって登高
11:00 林道と合流(650m)
・ 幅の広い林道
・ 白倉岳、花房尾は真っ白で美しい
11:30 林道 700m地点
・ ここで今回の登高を打ち切る
・ 気温5度、天気もよく琵琶湖も望めて、ここでのんびり大休止
12:30 滑降開始(~林道滑降)
・ 雪質が西面側シャーベットと北面側アイスバーンと交互に変わる
・ 倒木・デブリ・林道崩落が至る所にある
14:30 駐車場下山(250m)
15:00 近江高山 → 帰宅