min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

ジョッキー

2005-04-25 12:33:01 | 「マ行」の作家
村松剛史著 集英社文庫 2005年1月

日本には多分“競馬小説”なる小説ジャンルなどないと思われる。この小説は一騎手の視点からとらえた優れた「競馬小説」であるとともにそれ以上に爽やかな「青春恋愛小説」である、とも言える。
主人公中島八弥は競馬学校を卒業し美浦トレセンにあるマイナーな厩舎に所属する騎手である。だがこの千葉厩舎は経営難に陥り、窮余の策として有力な馬主兼生産者の大路に援助を仰いだ。その見返り条件は大路の息子を千葉厩舎の専属騎手として配することであった。
中島八弥はそのおかげで千葉厩舎を出るはめになり、フリーランスの騎手として生きざるを得なくなったのだが生来の性格と兄弟子の影響を受けてか自ら騎乗の鞍を得る営業は行わなかった。
したがって日々の食費にも事欠く有様であった。そんな彼にある日思いもかけぬチャンスが巡ってきたのだが・・・。
今や30才を目前とした不遇の騎手八弥は果たしてそのチャンスをものにし一挙に一流ジョッキーへ浮上できるのであろうか?
中央競馬会の様子や彼を取り巻く強烈な個性を持つ馬主やら調教師、厩務員、同僚のジョッキーらが織り成す物語は普段窺い知れぬ世界であるが故に興味深いものがある。