打海文三著 徳間書店1996年
ミステリーサスペンスなのであろうか。題名からみるとほぼ手を出さないであろう作品であるが、かの打海文三の作品ということで読んでみた。
13歳の少女(離婚した家庭に育ちかつ登校拒否児童である)が一時父母と共に過ごした山梨県のとある山間部へ出かける。目的は自殺行であった。元住んでいた場所には往時の家はなくかわりに丸太小屋が建っていた。そこで暮らす男と出会い、そして切った丸太の上に死体らしきものを発見し逃げ出した。物語はこんな出だしから始まる。前半から後半にかけちょっと乗りにくい調子が続くが事件の陰に警察の公安が出てくるあたりから一挙に“謀略”小説の舞台に入るか、と思われる。が、しかし事の本質はもっと“小粒”なことであることが判る。全般的なスケールは小さく、一種の恋愛・痴情小説ともとられかねないが、登場人物がいい。
特に13歳の姫子という少女の大人顔負けの“恋の鞘当て”により周囲のマッチョな元警官、野崎を含め全ての大人達が振り回される図は滑稽で愉快だ。内容がどろどろした謀略と痴情のもつれなど陰湿ではありながら読後感がすがすがしいのは何故?
「ハルビンカフェ」や「裸者と裸者」とは一線を画した作品で興味深かった。
ミステリーサスペンスなのであろうか。題名からみるとほぼ手を出さないであろう作品であるが、かの打海文三の作品ということで読んでみた。
13歳の少女(離婚した家庭に育ちかつ登校拒否児童である)が一時父母と共に過ごした山梨県のとある山間部へ出かける。目的は自殺行であった。元住んでいた場所には往時の家はなくかわりに丸太小屋が建っていた。そこで暮らす男と出会い、そして切った丸太の上に死体らしきものを発見し逃げ出した。物語はこんな出だしから始まる。前半から後半にかけちょっと乗りにくい調子が続くが事件の陰に警察の公安が出てくるあたりから一挙に“謀略”小説の舞台に入るか、と思われる。が、しかし事の本質はもっと“小粒”なことであることが判る。全般的なスケールは小さく、一種の恋愛・痴情小説ともとられかねないが、登場人物がいい。
特に13歳の姫子という少女の大人顔負けの“恋の鞘当て”により周囲のマッチョな元警官、野崎を含め全ての大人達が振り回される図は滑稽で愉快だ。内容がどろどろした謀略と痴情のもつれなど陰湿ではありながら読後感がすがすがしいのは何故?
「ハルビンカフェ」や「裸者と裸者」とは一線を画した作品で興味深かった。