min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

船戸与一著『祖国よ友よ』

2008-10-19 16:51:24 | 「ハ行」の作家
船戸与一著『祖国よ友よ』徳間文庫 1992.10.15第一刷 485円+tax
*この作品は1980年双葉社より刊行。
オススメ度★★★★☆

最近の船戸氏は相変わらず精力的に長編を書き続けているが、本編は初期の頃(小説としてのデビュー作「非合法員」の次に書かれたと思われる)の作品で彼には珍しい短編集(4作)となっている。
多分自分は約20年ほど前に読んだはずなのだが、今回再読してみて断片的には憶えている部分もあるが大半は記憶の遙か彼方へ行ってしまっていた。
短編であるが故に、これらの作品群はより船戸与一の作家としての特徴を顕している、と言える。
その特徴とは登場する人物(今回は全て主人公が日本人)の背景には必ず世界の紛争地あるいは紛争を生み出す国家、組織が介在している。それも我々がほとんど日常関心を注がないであろうマイナーなものばかりな気がする。
それらの作品は

「祖国よ友よ」
フランス外人部隊でかって共に戦ったことがある日本人らしき男、ナンジョーが酒場で上官を撃ち殺した。彼はそのまま逃亡したのだがその場に居合わせた“俺”は外人部隊本部の上官からナンジョーを探し出し射殺しろと命令される。
彼の連れにかって戦ったアフリカ・ザイールの女ゲリラがいた。ナンジョーは一体何故上官を殺さねばならなかったのか・・・

「爆弾の街」
一度はライフル射撃でオリンピック強化選手に選ばれたことがある“俺”は何故今、狙撃銃を持って北アイルランドのベルファーストにいるのか?
スコープの中のターゲットは英国陸軍大佐のバーナビー・ジョイスである。

「どしゃぶり行路」
オランダのスキポール国際空港に駐機されたKLMオランダ航空のジャンボ機内に“俺”は日本国警視庁から派遣された刑事の腕と手錠で繋がれたままシートに座っていた。
なんとこの機は50時間ほど前に“自由モルッカ共和国軍”を名乗る兵士たちによってハイジャックされたのであった。
“俺”は別に赤軍派ではないけれど日本で銀行を襲って国外逃亡をしたのだが・・・

「北溟の宿」
“俺”はドイツにある監獄から二人の外国人囚人と共に脱獄して逃亡中である。
ひとりはばかでかい図体と極めて粗暴なボヘミア人、もうひとりは腺病質で小柄なゾロアスター教を狂信するイラン人だ。ふたりは“俺”と同罪ではなく単に脱獄を手伝ってもらっただけの関係だ。
“俺”は西ドイツのボーダー・マインホフの幹部に連絡を取り隠れ家でピックアップしてもらう手はずを取ったのであるが・・・

船戸氏の世界を初めて覗く方にはおすすめの作品といえる。

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