min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

航海者

2005-05-25 17:50:15 | 時代小説
白石一郎著『航海者-三浦按針の生涯(上・下)』文春文庫 上下\610

戦国時代にかの徳川家康に召抱えられた唯一の外国人、三浦按針ことウィリアム・アダムスの生涯を描いた作品。
ウィリアム・アダムスはイギリスのケント州に生まれ、12歳で造船工となる。父は同じく貧しい造船工であったが一攫千金を夢見て北方航路開拓の船団に乗り込み消息を絶った。
息子はその後イギリス海軍に入り技を磨き、ついには航海長としてオランダの東方航路開拓の5隻の船団に加わることになった。
船団の出発時期が季節はずれであったため喜望峰経由を断念。一行は急遽アフリカ西海岸から大西洋を横断し南米に沿って南下、マゼラン海峡を経て太平洋に出て日本へと向かった。
だが彼らの行く手には熱病、栄養失調、寒さ、飢餓、大嵐、未開の現地人の襲撃などが次々とたちはだかり、当初5隻あった船団が日本へたどり着いたのはただの一隻であった。
最後の1隻となったリーフデ号の乗組員もオランダの港を出たときには百数十名いたものが最終的に生きて日本へたどり着いたものは14名のみという、いかに当時の航海が過酷であったかを物語る。
ここまでを描いたのが上巻。下巻では日本の九州へ漂着したウイィアム・アダムスがいかに家康に重宝され、あげく浦賀に領地を与えられ苗字帯刀を許されたかが描かれる。
全編を通じ、ウィリアム・アダムスというイギリス人の、その類まれなる航海者としての情熱と冷静かつ真摯な生き様が圧倒的筆致でもって描かれる。
この作品は白石一郎の海洋ものの一大集大成ともいえるもので、日本の時代海洋小説を描き続けた著者もまた偉大な“航海者”として三浦按針の中に自己投影されているような思いがした。

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