min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

藤田宜永著『女 ファム』

2009-03-19 11:09:15 | 「ハ行」の作家
藤田宜永著『女 ファム』 新潮社 2003.2.20第1刷1,400円+tax

オススメ度★★★☆☆

著者である藤田宜永氏に対する私のイメージは1995年に日本推理作家協会賞並びに日本冒険小説協会特別賞を受賞した『鋼鉄の騎士』に代表される、ちょっと毛色が変わった冒険小説の旗手であった。
初期の数編は同じような基調で書かれた小説が続いたと思ったが、その後は恋愛小説の分野に進んだようだ。
そんなんで何時しか同氏の著作から離れてしまっていたのだが、縁があって本編を読むことになった。

同氏は1970年代にパリに7年ほど遊学していたようなのであるが、人生も晩年にさしかかる齢になった今、当時の自分を6篇の短編に投影させるような作品を書き上げた。一種の青春期へのノスタルジーを感じたのかも知れない。
6篇とも全て彼の地で出会った女たちとの恋愛もしくは情事を綴ったもので、各編に登場する日本人は違えども明らかに著者の分身であることが容易に伺われる。
どの日本人主人公も最初の海外へ出かけた志からは離れ、ただ惰性でその日を送る退廃的な生き方をする点においては共通しており、登場する女たちもありきたりとは言えない類に属する者達である。
いわゆる“青春の蹉跌”とも言える懐古趣味的作品群であり、濃厚なエロスとデカダンスの匂いが漂い、読後感は爽快とは言いがたい。
ただ個人的には極めてシンパシーを感じる部分が多く、私自身このような日本人たちを同時代の欧州で出会ったことを懐かしく思い起こしながら読み進めた。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿