
カルロス・ルイス・サフォン著『風の影(上・下)』(原題:LA SOMBRA DEL VIENTO)集英社文庫 2006.7.25初版
オススメ度 ★★★★☆
1945年のスペイン、バルセロナで11才の少年ダニエルは書店主の父親に連れられて「忘れられた本の墓場」に行く。そこで偶然手にした『風の影』という小説に魅入られてしまう。本の内容から更に著者であるフリアン・カラックスという人物の謎に興味を抱き、彼の過去にせまろうとする。
フリアンの過去を追うに従い、自分の境遇に妙に一致することに気がつくのであるが、やがてフリアンの過去が判明するに従ってダニエル自身にも危険がせまってくる。
主人公ダニエルとシンクロするようなフリアンの過去は、スペイン市民戦争が勃発する重い暗雲がたれこめる時代背景とあいまって、太陽の光があふれる情熱の国スペインとは対極の東欧の陰鬱な気候のように、暗く、凄惨な物語として綴られる。
二人の恋は共に19世紀のシェイクスピア悲劇のように重苦しく描かれ、やがて双方の恋が悲劇に向かって周囲の家族、友人を巻き込みながら突き進んでいく。
上巻は著者の文学的情念があふれ過ぎた感があり、読み手には冗長とも思われる。もつれた糸が錯綜し、一体この先どんな展開になるのか分からなくなる。
そんなある種いらつく感情を持ってしまうのだが、下巻になってそのもつれた糸が一気呵成にほぐれていく様は圧巻だ。ストーリィテリングの巧さに加え、重厚な文学作品のように仕上がった本作品は十二分に読み応えがある。
オススメ度 ★★★★☆
1945年のスペイン、バルセロナで11才の少年ダニエルは書店主の父親に連れられて「忘れられた本の墓場」に行く。そこで偶然手にした『風の影』という小説に魅入られてしまう。本の内容から更に著者であるフリアン・カラックスという人物の謎に興味を抱き、彼の過去にせまろうとする。
フリアンの過去を追うに従い、自分の境遇に妙に一致することに気がつくのであるが、やがてフリアンの過去が判明するに従ってダニエル自身にも危険がせまってくる。
主人公ダニエルとシンクロするようなフリアンの過去は、スペイン市民戦争が勃発する重い暗雲がたれこめる時代背景とあいまって、太陽の光があふれる情熱の国スペインとは対極の東欧の陰鬱な気候のように、暗く、凄惨な物語として綴られる。
二人の恋は共に19世紀のシェイクスピア悲劇のように重苦しく描かれ、やがて双方の恋が悲劇に向かって周囲の家族、友人を巻き込みながら突き進んでいく。
上巻は著者の文学的情念があふれ過ぎた感があり、読み手には冗長とも思われる。もつれた糸が錯綜し、一体この先どんな展開になるのか分からなくなる。
そんなある種いらつく感情を持ってしまうのだが、下巻になってそのもつれた糸が一気呵成にほぐれていく様は圧巻だ。ストーリィテリングの巧さに加え、重厚な文学作品のように仕上がった本作品は十二分に読み応えがある。
直近で読んだ「ブラッド・メリディアン」でこの作品が出てきてことと何かシンクロし、不思議な気持ちがした。
機会があれば読んでみようかな。
ぼくはおもしろくて一気に読んでしまいました。