min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

樋口明雄著『竜虎』

2012-11-27 14:17:44 | 「ハ行」の作家
樋口明雄著『竜虎』双葉社 2012.4.22第一刷

オススメ度 ★★★★★

本書は『頭弾』(1997/5)『狼叫』(1998/9)に続く満州の女馬賊紫火(さいか)シリーズの第三弾、完結変である。
本シリーズはかって檀一雄が実在の日本人馬賊、伊達順之助(1892~1948 戦国武将伊達政宗の直系子孫)を描いた『夕日と拳銃』にオマージュを捧げた作品である。
本シリーズ第一作『頭弾』を読み、主人公の女馬賊紫火に一目ぼれした読者は多いと思う。次回作『狼叫』の結末はもう記憶の彼方に飛んでしまい、結局彼女はどうなったのだろう?と思いつつ本編を手にした。
冒頭より伊達順之助の処刑シーンから始まり、伊達が天を仰ぎ最後に想いを馳せたのは白馬銀公子にまたがり疾走する紫火の姿であった。
その彼女は顔面半分に醜い疵を受け、身体の半分にも傷を背負い、阿片で身体も心もボロボロの状態で徐輝英という馬賊の頭目に救われた。
その徐輝英の率いる馬賊も日本軍および傀儡政権の警察軍に追われ、馬占山という最後の大物馬賊を頼って紫火を伴って根拠地を脱出するのであるが・・・・・

一方、満州国軍、上将の地位にある伊達順之助は未だに見果てぬ夢、「満蒙を開放して日中融和の王道楽土を築く」という夢を抱いていた。そんな彼のもうひとつの夢はかって互いに雌雄を決して戦いながらも決着が付いていない紫火との邂逅であった。
本編で繰り広げられる激しい戦闘の果てに、ついに両雄が対峙しその雌雄を決する時を迎えた。血沸き肉踊る大活劇冒険小説とは本編のような作品を言うのである。樋口明雄さん、よくぞ完結編を描いてくれたものだ。このシリーズこそあなたの真骨頂と呼びたい!