長谷川卓著『逆渡り』毎日新聞社 2011.2.15 第1刷
1,500円+tax
おススメ度:★★★★☆
本の帯にある“漂泊の山の民が独り戦国の山野を渡る”という表記を見て、「これはひょっとして戦国時代の山窩(サンカ)の物語か!?」と興奮と期待を持って読んだ。
歴史学者によると、山窩(サンカ)という言葉は江戸末期あたりから使われたものと言われ、山窩(サンカ)と呼ばれる山の民は昭和のなかば迄には消滅したと言われる。山窩を描いた映画作品では中島貞夫監督、萩原健一主演で「瀬降り物語」がある。
だが一方ではこのような山の民は古来より存在したと説く学者や作家もおり、その真偽は別として一種のロマンを感じさせる存在である。
著者長谷川卓氏の作品では「血路 南稜七ツ家秘録」のように、時代劇ではあるがそこに登場する人物は歴史上に名を残した武将や剣豪を描くわけではなく、士農工商の枠外に生きた人々に光を当て、彼、彼らの生きざま、死にざまを鮮烈に描くところに著者の最大の特徴がある。
ところで本編のタイトル「逆渡り」であるが、サンカの渡り(ある設営地ら別の設営地へ移ること)に対し、一種の「姥捨て」のような概念で男も女も60歳に到ると自らの死地を求めて仲間の元を去る、ということである。
これは著者の造語かと思われる。
主人公、月草は57歳にして最後の戦働き(彼らの役目は医者の役目を果たす医僧を助け戦場の負傷兵の手当てをする)に出た後、故郷の隠れ里に戻った時に少し早いが“逆渡り”の旅に出たいと一族の長に許しをこうた。
それは彼の亡き妻が死んだら遺灰を越後の山の中で見た素晴らしく大きな、そして美しい桜の木の根元に埋めて欲しい、という念願を思い起こしたせいであった。
長の許しを得た月草は翌年の早春に妻の遺灰と旅に必要な食糧、装具を持って出発したのであったが、彼が想像もしなかった事態が彼を待ち受けることになる。
平穏な鎮魂の旅であるはずのものが、否応なしの地獄のような旅となる。果たして彼は亡き妻の願いを叶えることが出来るのか?
1,500円+tax
おススメ度:★★★★☆
本の帯にある“漂泊の山の民が独り戦国の山野を渡る”という表記を見て、「これはひょっとして戦国時代の山窩(サンカ)の物語か!?」と興奮と期待を持って読んだ。
歴史学者によると、山窩(サンカ)という言葉は江戸末期あたりから使われたものと言われ、山窩(サンカ)と呼ばれる山の民は昭和のなかば迄には消滅したと言われる。山窩を描いた映画作品では中島貞夫監督、萩原健一主演で「瀬降り物語」がある。
だが一方ではこのような山の民は古来より存在したと説く学者や作家もおり、その真偽は別として一種のロマンを感じさせる存在である。
著者長谷川卓氏の作品では「血路 南稜七ツ家秘録」のように、時代劇ではあるがそこに登場する人物は歴史上に名を残した武将や剣豪を描くわけではなく、士農工商の枠外に生きた人々に光を当て、彼、彼らの生きざま、死にざまを鮮烈に描くところに著者の最大の特徴がある。
ところで本編のタイトル「逆渡り」であるが、サンカの渡り(ある設営地ら別の設営地へ移ること)に対し、一種の「姥捨て」のような概念で男も女も60歳に到ると自らの死地を求めて仲間の元を去る、ということである。
これは著者の造語かと思われる。
主人公、月草は57歳にして最後の戦働き(彼らの役目は医者の役目を果たす医僧を助け戦場の負傷兵の手当てをする)に出た後、故郷の隠れ里に戻った時に少し早いが“逆渡り”の旅に出たいと一族の長に許しをこうた。
それは彼の亡き妻が死んだら遺灰を越後の山の中で見た素晴らしく大きな、そして美しい桜の木の根元に埋めて欲しい、という念願を思い起こしたせいであった。
長の許しを得た月草は翌年の早春に妻の遺灰と旅に必要な食糧、装具を持って出発したのであったが、彼が想像もしなかった事態が彼を待ち受けることになる。
平穏な鎮魂の旅であるはずのものが、否応なしの地獄のような旅となる。果たして彼は亡き妻の願いを叶えることが出来るのか?