min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

10年前の今月に読んだ本

2012-11-06 11:17:06 | ノンジャンル
10年前の今頃、自分はどんな本を読んでいたのか?
暇にあかせて自分のHPの読書感想をのぞいてみた。



独断と偏見に満ち満ちた5★評価です。



2002年11月


11月に読んだ本のリスト

#55『新日本中国戦争第15部日中激突』★★☆☆☆ 読了日11/02
#56『D.o.D.』DICE OR DIE ★★★☆☆ 読了日11/05
#57『向こう側にすわった男』 ★★★☆☆ 読了日11/07
#58『残光』 ★★★★★ 読了日11/10
#59『孤立突破』 ★★★☆☆ 読了日11/13
#60『ニカラグア密航計画』★★★☆☆ 読了日11/16
#61『ススキノ・ハードボイルド・ナイト』★★★★★ 読了日11/17
#62『T.R.Y.』★★★☆☆ 読了日11/22
#63『探偵は吹雪の果てに』★★★☆☆ 読了日11/24
#64『日輪の翼』★★★★☆ 読了日11/29


#55『新日本中国戦争第15部日中激突』★★☆☆☆ 読了日11/02
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著者:森詠
発行:学研 2002年11月6日
価格:各\760+tax 
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もう読まないぞ、このシリーズは!と思いつつ出るとまた買ってしまう自分。もう15部目にもなるんか。
「日中激突」というサブタタイトルに惹かれた部分も今回はある。
台湾侵攻作戦に失敗した中国北京軍と日米PKF軍が中国本土で激突する。なかでも自衛隊のF-15イーグルと中国の最新鋭機殲撃13型とのドッグファイトがみもの。
森詠の「燃える波濤」以来の中国分割論が今又本作品でも展開される。覇権主義国家である中国は確かにその勢力を分散したほうが近隣諸国ばかりではなく世界平和のためにはよろしいのでは。他人にはけっしておすすめはできないシリーズだが、やっぱりまた出たら読むんだろなぁ......。


#56『D.o.D.』DICE OR DIE ★★★☆☆ 読了日11/05
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著者:沢井鯨
発行:小学館 2002年9月20日
価格:\1,100+tax 
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デビュー作のP.I.P.(プリズナー・イン・プノンペン)は相当強烈な内容の作品であったが、実体験を基にして書かれていたためある種凄みというか迫力のある作品であった。この作者、次回作はあるんだろか?と密かに思っていたのであるが、ここに全作よりエキセントリックなストーリーをひっさげて再び登場した。
舞台はフィリピン。マニラに巣くうドロップアウトした日本人達の描写が先ず面白い。そんな中にプノンペンから直行で飛び込んだ主人公イザワは日本の常識では計り知れない日本人たちに揉まれ、ついにはフィリピンの底知れぬ暗部に足を踏み入れることに。
ストーリー展開は“荒唐無稽”の一語に尽きるのだが、これもご愛敬といおうか、主人公の無軌道ぶりに唖然としながらもけっこう楽しんで読めた。
さて、次回作のために再びタイ、ミャンマーに取材行しているという作者だが、次はどんなストーリーを展開するのか今から楽しみだ。


#57『向こう側にすわった男』 ★★★☆☆ 読了日11/07
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著者:東直巳
発行:ハヤカワ文庫 1996年9月15日
価格:\520 
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ススキノ便利屋「俺」シリーズの唯一の短編集。標題の「向こう側にすわった男」を初め、「調子のいい奴」「秋の終り」「自慢の息子」「消える男」の5作が収められている。
この短編の中では「調子のいい奴」が一番面白かった。
が、やはりこのシリーズ、長編のほうがもちろん良い。あと、一作あるのみ?


#58『残光』 ★★★★★ 読了日11/10
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著者:東直巳
発行:角川春樹事務所 2000年9月8日 第一刷
価格:\1900 
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読み始めてしばらくして、『あれぇ~!』って思ってしまった。
榊原健三という男が主人公らしいのだが登場してくる人物がほとんど“おなじみの面々”である。そう、ススキノ便利屋「俺」シリーズの面々だ。だが、いつもと様子が違う。
ストーリーから文体までガチガチのハードボイルドじゃないの、これは。
読み出してから気づいたのだがこの『残光』の前に同じく榊原健三を描いた『フリージア』という作品があるらしいのだが探しても見付からない。
これまたハルキ文庫というところから出版されているのだが、どうもこの作家、出版社に恵まれないというのがいまひとつ世にブレークしない理由かな、なんて思ってしまう。
でも大方の前後関係が本編でも分かったので構わず読み進めた。便利屋の数年後がかいま見えたり興味深いのであるが、ちょっと待ってよ、ここまで来る前の作品があるんじゃないの?と少々あわてたりもした。
しかし、そんなことはどうでもよくなるほどのスピードと迫力で物語りが進行し、結果、一気読みしてしまった。
う~ん、この作家、ただもんじゃないぞ!


#59『孤立突破』 ★★★☆☆ 読了日11/13
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原題:TENTH MAN DOWN
著者:クリス・ライアン
発行:早川書房 2001年11月5日 第一刷
価格:\900 
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『襲撃待機』『弾道衝撃』『偽装殲滅』に続くSAS隊員ジョーディー・シャープのシリーズ第4作目。
物語の舞台はアフリカ。カマンガ政府(もちろん架空の国)の要請で政府軍コマンド部隊の訓練にあたっていたSASのチームは、一台のトラックが引き起こした交通事故により、現地の呪医(呪術師)から10人の白人が死ぬだろう、と予言される。
ま、これ以上のストーリー紹介はやめておくが、なんか「呪術」を持ち出すことによって今までセミドキュメンタリー・タッチの描写が影をひそめ、作者自身が呪術にかけられてしまったような作品になってしまった。
著者描くところの「アフリカ人」のあまりの愚かさ、野蛮さには辟易する。全く事実ではないわけではないけど。
そんな中で登場するジェイソン・フィリ(最後まで行動をともにする現地人)の存在に多少救われる思いがするのだが。
これでこのシリーズは終了のような気持ちにさせるエンディングだ。


#60『ニカラグア密航計画』★★★☆☆ 読了日11/16
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題名:ニカラグア密航計画
著者:宮内勝典
発行:KYOIKUSHA 1986年12月
価格:\1500(当時) 
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全体が12章からなるある種の紀行文なのだが、表題の『ニカラグア密航計画』は10~12章に記されている。あとの部分は著者がニューヨークを起点にアフリカ、スリランカ、カリブなどを旅した旅行記となっている。
著者が最初に足を踏み入れたのは恐らく1980年代の中頃よりちょっと前ではなかろうか。西アフリカから東アフリカに移動、さらに北アフリカ(一度ヨーロッパに入った後)を回るのであるが、僕自身が旅した軌跡とかなり重なる部分があり興味が持てる。
ケニア在住の著者の友人がソマリ女性と結婚し子供をもうけている箇所では、やはり著者の目にもソマリ女性、そして隣国のエティオピア女性が極めて魅力的に映る記述にひとりうなずいてしまった。

さて、後半のニカラグアへの密航であるが、これは著者が合衆国のインディアンとの繋がりから成り行きで行なわれたものである。カリブ諸国内では先住民としてのインディアンはほとんどスペインを始めとする“征服者”たちの手によって放逐された。ここニカラグアも2,30万人の先住民がかって住んでいたものの、彼らもやはり1934年のソモサ軍事独裁政権によって国を追われ隣国のホンデュラスなどに難民として逃れていった。
その後ソモサ政権は左翼系ゲリラ組織、サンディニスタ民族開放戦線によって打倒されるのだが、生き残った先住民であるインディオ(作品中は意図的にインディアンと称している)はミスラサタ(MISURASATA)というゲリラ組織をつくりその自治権を求めて戦いを始めた。
ゲリラたちは満足な装備はなく、手にする武器も各国のものでバラバラだ。割り当てられた弾丸もわずか4,50発というありさま。食べるものにも困窮し、ジャングルの中で細々と政府軍に抗っておりその勝算は絶望的に見える。先住民族の物質文明へのスピリテュアルな戦いとしては極めて意義のある戦いなのであるが.........
著者宮内勝典氏は野間文芸新人賞を受けているくらいの文才に恵まれたお方だ。現在も米国に在住。

#61『ススキノ・ハードボイルド・ナイト』★★★★★ 読了日11/17
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題名:ススキノ・ハードボイルド・ナイト
著者:東直己
発行:寿郎社 2001年4月18日 第一刷
価格:\1800+tax 
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北海道新聞木曜版「道新おふたいむ」紙上で1996年から2000年にかけて連載されたコラム『すすきのバトルロイヤル』からの抜粋である。以前同名で北海道新聞社刊で出されたそうだがその中でもれてしまった作品を集めたとのこと。
これは東氏が実際すすきので出会った人々と彼らの周辺で起こりえたエピソードを綴っているのだが、作者自身もそうとうの飲んべいであることから自然に酔っぱらいにまつわる小話が大半を占める。
自らのドジも含め周囲ののんべえが繰り広げる失敗例または狂態は著者のエスプリをきかせた語り口と更にウィットとユーモアにあふれる文章は読者をして抱腹絶倒させシンミリとさせ時には深い反省を促したりもする。
このクレージーな世界に出入りする氏はその著作であるススキノ便利屋シリーズの「俺」にかなり投影されていることが分かる次第。こんな面白いエッセイ?はそうそう無いのでは!

#62『T.R.Y.』★★★☆☆ 読了日11/22
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題名:T.R.Y. トライ
著者:井上尚登
発行:角川文庫 平成14年7月15日 四版
価格:\667+tax 
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なんか最近ローマ字3つの題名の本が多いのはどういうこったろ?お初の作家である。1900年代初頭から欧州、ロシアそして日本、中国をまたにかけて活躍した稀代の“詐欺師”伊沢修の物語。読んですぐ感じたのは映画の『スティング』。これぞと狙った相手を大仕掛けで騙す手口の妙がなんともあのP.ニューマンやR.レッドフォードの映画を想起させる。
同じことを巻末の解説のところで映画監督の催洋一氏が記されていた。とにかく騙し騙され最後のドンデン返しは読者をも欺く。さ、あなたも騙されてみます?
ところでこの作品、織田裕二主演で映画化されこんどの正月明けに公開されるそうな。期待していいのかは?。


#63『探偵は吹雪の果てに』★★★☆☆ 読了日11/24
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題名:探偵は吹雪の果てに
著者:東直己
発行:早川書房 2001年12月31日 初版
価格:\1800+tax 
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シリーズ4作目『探偵はひとりぼっち』から時間がいっきょに十年以上経っている設定で、「俺」はもう45歳となっている。あれ、前回から今までの間が飛びすぎてんでないかい?と思うのだが、この間の物語といえば先日読んだ『残光』であろうか。あの春子先生とはどうなってしまったの?という向きにはネタバラシするわけにゃイカンわけ。どうぞ読んでのお楽しみ?ってか。
さて、今度はある事情で「俺」はススキノを離れ、吹雪が舞う深川の奥地“斗己誕”(トコタン)という過疎地に行く事にあいなる。
吹雪の雪原に繰り広げられる死闘。。。というわけだが雪道でスッテンコロリンと転んでしまう「俺」はいつものススキノを闊歩するようなわけにはいかんのだった。十五年前に別れた恋人が現れ「俺」が北大に通わなくなった頃の理由が明らかにされたりするのだが、何故か甘ずっぱい感傷ともいえる描写が垣間見える。これも「俺」が45歳という年になったせいか。なんかこのシリーズ、これにて終了!という気もしてきた。




#64『日輪の翼』★★★★☆ 読了日11/29
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題名:日輪の翼
著者:中上健次
発行:文春文庫 1992年9月10日 第一刷
価格:\480+tax 
*図書館より借り出し
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熊野の「路地」に住む主人公ツヨシほか3名の若者と7人の「オバ」らが改造冷凍トレーラーで伊勢、一宮、諏訪、恐山そして最終目的地皇居に向け「聖地巡礼」の旅に出る。

中上健次の作品は熊野に興味を抱くものにとって必読なのであろうが、なぜか“おどろおどろしい”イメージがありなかなか手を出しかねていた。
読み始めた途端、その特異な文章のリズムに戸惑いを感じる。普段はハードボイルドを中心とした短いテンポで切れがある文章に慣れ親しんでいる自分には苦痛であった。
また、冒頭より「オバ」らの強烈な熊野言葉の方言やそのいちいち辛気臭い言動に惑わされ、このまま続けて読むのがイヤになりかけた事もあったが、読み進むにつれ「中上ワールド」にぐいぐい引き込まれていった。

車(本作品の場合は巨大なトレーラー)で移動しながら進行する手法はけっこうポピュラーなものがあり、こうした小説はロード・ムーヴィーならぬロード・ノヴェルとでも呼ぶのであろうか。
複数のいわくくある登場人物たちが、道中でこれまたいわくありげな人々に出会いながら物語がつくり出されていくのだ。
それにしても7人の「オバ」らの神仏への敬虔な信仰心とは対照的にツヨシと「田中さん」らの奔放な性行動は見事なコントラストをなす。過去と未来、男と女、老いと若さ、信仰と背徳、都会と田舎、こうした相対するもの全てを内包しながら奇妙な巡礼の旅が続き、ある意味では「幻想的」なエンディングを迎える。

作中、多少主人公より年上とはいえ、同じ仲間の田中という登場人物に「田中さん」と敢えて“さん”をつけた理由はなんだろ?などとどうでもいいことに疑問がわいてしまった。単にふだんからそう呼んだに過ぎないのかも知れないの。ま、いいっか。
主人公ツヨシはまぎれもなく作者・中上健次自身を投影しているのだが、それにしてはちょっとハンサムすぎやしませんか?



以上。それにしても読書傾向が10年前からほとんど変わらんなぁ(苦笑)




百田尚樹著『影法師』

2012-11-06 10:53:30 | 時代小説
百田尚樹著『影法師』講談社 2010.5.30 第1刷 
1,600円+tax

おススメ度:★★★★☆

本作は百田尚樹氏初の時代小説である。本作のメインテーマは男の友情。真の友はどこまでその友のために尽くすことが出来るか!?本作は友情の究極を描いたもの、と言っても過言ではない。
二人の生きた時代は江戸という封建社会。多くの矛盾に満ちた社会の中で二人の友情は育まれた。
二人の少年は異例の出世を遂げた。だが一人は武士としてあるまじき破廉恥行為をしでかし藩から蓄電し、果てに非業の最期をとげた。ひとりは下級武士から国家家老まで出世を遂げたのだが、江戸より二十年ぶりに故郷の藩邸に戻った彼は蓄電した亡き友の真実の姿を知ることとなる。
「永遠の0」同様、作者の仕掛けた罠?に嵌った読者は、主人公が慟哭する様を思い浮かべ涙を共に流すことになる。
物語はドラマティック過ぎ、そのあまりの完成された構成に身を震わせられる。
作りごととはわきまえていながら、百田尚樹氏のストーリーテリングの上手さに引き込まれてしまう秀作。