大沢在昌著『新宿鮫Ⅹ 絆回廊』2011.6.10 第1刷 1,600円+tax
おススメ度:★★★★★
1990年に「新宿鮫」が上梓されて以来20年を超える時が流れ、本シリーズは第10作目となった。
自分としては本シリーズが始まる以前から大沢在昌氏に注目しほぼリアルタイムで同氏の作品を読んできたのだが、「新宿鮫」シリーズが同氏の代表作であるとは思わなかった。
実際、第二作目の『毒猿』は別格として他のシリーズ作が常に氏の標準以上の作品であったとは思えない。
だが、この数年同氏の生み出す作品にはことごとく失望することが多く、約5年ぶりに出された本作もよもや?と危惧しつつ読み始めたのであった。
結論から言うと僕の危惧はかき消えた。確かに鮫島刑事のパワーは最盛期よりも落ちたかも知れないが、精神的な基軸となる部分は依然としてブレることはなかったからだ。
それは同じキャリアとしての同期であった香田との会話の中で、何故鮫島が刑事となったのか、刑事としての務めは何であるのか、香田が「今更そんな青臭い意見なんぞ聞きたくない」と遮るほど昔の鮫島と同様の「警察官としての矜持」が語られる。
だが、彼の「矜持」が鮫島の唯一の恋人晶を失いかねない原因となる。
そもそもこの晶という女性との恋愛はあり得ない関係で、大沢氏が彼女を登場させた時から「一体、彼女とどう別れさせるつもりなのか?」と疑問に思っていたのだが、ここへきてやっと清算する機会を鮫島に与えたと言っても良いのでは。
もうひとり、鮫島はかけがいの無い人物を失うことになるのであるが、これだけは言うわけにはいかない。
彼を失ったことが恐らく本シリーズが大きく転換する契機となるであろう。
僕としては本シリーズが続き今後の鮫島の行く末、生き様をしっかりと見守りたい気持ちでいっぱいだ。
5★は多少甘い採点かも知れないが、これは「新宿鮫」と呼ばれた男に対する熱きエールと思っていただきたい。
おススメ度:★★★★★
1990年に「新宿鮫」が上梓されて以来20年を超える時が流れ、本シリーズは第10作目となった。
自分としては本シリーズが始まる以前から大沢在昌氏に注目しほぼリアルタイムで同氏の作品を読んできたのだが、「新宿鮫」シリーズが同氏の代表作であるとは思わなかった。
実際、第二作目の『毒猿』は別格として他のシリーズ作が常に氏の標準以上の作品であったとは思えない。
だが、この数年同氏の生み出す作品にはことごとく失望することが多く、約5年ぶりに出された本作もよもや?と危惧しつつ読み始めたのであった。
結論から言うと僕の危惧はかき消えた。確かに鮫島刑事のパワーは最盛期よりも落ちたかも知れないが、精神的な基軸となる部分は依然としてブレることはなかったからだ。
それは同じキャリアとしての同期であった香田との会話の中で、何故鮫島が刑事となったのか、刑事としての務めは何であるのか、香田が「今更そんな青臭い意見なんぞ聞きたくない」と遮るほど昔の鮫島と同様の「警察官としての矜持」が語られる。
だが、彼の「矜持」が鮫島の唯一の恋人晶を失いかねない原因となる。
そもそもこの晶という女性との恋愛はあり得ない関係で、大沢氏が彼女を登場させた時から「一体、彼女とどう別れさせるつもりなのか?」と疑問に思っていたのだが、ここへきてやっと清算する機会を鮫島に与えたと言っても良いのでは。
もうひとり、鮫島はかけがいの無い人物を失うことになるのであるが、これだけは言うわけにはいかない。
彼を失ったことが恐らく本シリーズが大きく転換する契機となるであろう。
僕としては本シリーズが続き今後の鮫島の行く末、生き様をしっかりと見守りたい気持ちでいっぱいだ。
5★は多少甘い採点かも知れないが、これは「新宿鮫」と呼ばれた男に対する熱きエールと思っていただきたい。