min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

ドン・ウィンズロウ著『砂漠で溺れるわけにはいかない』

2010-09-14 21:41:01 | 「ア行」の作家
ドン・ウィンズロウ著『砂漠で溺れるわけにはいかない』創元推理文庫 2006.8.11初版 720円+tax

おススメ度:★★☆☆☆

ニール・ケアリーシリーズの最終巻である。星が2つというのはこの作品の出来がよくない、というわけではなく他の方に、特にこのシリーズ未読の方にはオススメできない、ということだ。

カレンとの結婚を2カ月後にひかえ、カレンはしきりにニールの子供を欲しがる。カレンがそのことを口にするだけでなく、行動でせまる模様はけっさくで笑える。
ニールとしては、自分の生い立ちから考えると全く父親になる自信なんぞわいてこない。
積極的なカレンに対してどうしても及び腰になってしまい、そこをまたカレンに突かれてタジタジとなるトホホな状況だ。
ニールとしては子供が生まれる前に英文学の学位を取りたいという強い望みがあったせいもある。

そんな煮え切らない状況のニールに、またグレアムから超カンタンだという仕事が与えられた。
ラスヴェガスから戻って来ないジイサンをひとり連れ戻して欲しい、というものだった。
カレンの執拗なアタックから逃れたい気持ちもあり、ついこの仕事にのってしまうニールであった。
チョロイ仕事だとばかり思ったのがニールの誤算。このジイさんただものではない。
かってヴェガスのショウタイムを湧かせた老コメディアンである。ニールはさんざんこのジイさんに振り回されるのだが、ジイさんのエンドレスとも思える小話は、これは合衆国国民、それもある程度年齢に達した読者でなければ本当の意味での面白さは分からないであろう。

ともあれ、このジイさんを連れ戻すだけで終わる話であるわけがない。事態は思わぬきな臭い方向へと走り出す。
とはいっても前篇ユーモアのセンス(何度も書くが、あくまでアメリカ流の)にあふれ、フィナーレを飾るにふさわしい著者ウィンズロウのハイテンションな筆致で事は進む。

ということで、内容はともかく、「ああ、これでニール・ケアリーに会えないのか!」という寂しさで胸がいっぱいになる作品であ~る。
一説には子供が出来た後の続編を筆者は考えているとかいないとか。実現することを祈る。