min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

三雲岳斗著『M.G.H.楽園の鏡像』

2010-02-27 18:26:45 | 「マ行」の作家
三雲岳斗著『M.G.H.楽園の鏡像』徳間デュアル文庫 2006.6.30 初刷 686+tax

オススメ度:★★★☆☆

無重力空間に浮かぶ真紅の球体(実は血である)と与圧服を着たまま前面だけが潰れた、まるで墜落死したような死体が漂う、そんな衝撃的なシーンから物語りは始まる。
ここは日本初の多目的宇宙ステーションの「白鳳」。この死体は事故によるものなのか、故意の殺人によるものなのか。
この事件が未解決のまま、更に発生するもうひとつの事件。原因不明の喀血でもがき苦しみながら死亡した。果たしてふたつの死亡事故に関連性はあるのか、また殺人であるならば、犯人の目的は、動機は、そして方法は?。

密閉された、といえばこれ以上密封された空間はないであろう軌道上の宇宙ステーションで起きた事件を解決するのは、ここに新婚旅行でやってきた若き材料工学の研究員凌と彼に思いを寄せる従兄妹の舞衣であった。
舞衣はこの新婚カップル招待の宇宙旅行を凌に黙って密かに応募し、当選したことを良いことに凌に「偽装結婚」を強要し、強引に実現させたのであった。
凌にはこの舞衣の陰謀?を拒否するには忍びない「白鳳」を訪れたい強烈な欲望があったので彼女の策謀に乗ったわけだ。

事件の謎解きにはある意味納得できる手法がとられている。これが荒唐無稽な理屈だと興ざめしてしまうところを、我々素人でも高校の物理程度の理解力があれば解かるところがミソ。
ところで、本作はどう見ても若人向けに書かれたライトノベルっぽい装丁で、登場人物もいかにもコミックに出てきそうなキャラばかり。
どうにも生身の人間臭がしないのは読者である私の年齢のせいなのか。ま、ぶつくさ言わずに単純にライトなタッチ“青春SFミステリー?”を楽しめばよいのかも知れない。

本編は先日行われた旧FADVメンバーで行った「旧暦正月を祝う横浜中華街オフ」で本プレでいただいたもの。
本の表紙に描かれたイラストを見ただけで通常の僕であればけっして手には取らない代物である。

蛇足:「2000年第一回日本SF新人賞受賞作」の単行本を文庫化したもの。